民事再生申請の「Newton」発行元、負債増の理由は?自主再建を目指すと発表

» 2017年02月20日 22時28分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 科学雑誌「Newton」を発行するニュートンプレスは2月20日、東京地裁に民事再生手続きを申し立てた。この件について、同社の高森康雄代表取締役は、同日午後に開催した記者会見で「スポンサーの出資を募るのではなく、自主再建による収益弁済を目指す」と発表した。今後は社屋の移転と広告費の縮小などによって経費を削減し、従来通り月1回のペースで「Newton」の発行を続けつつ、約10年かけて負債を弁済する見通し。編集部の体制や、従業員の給与などに変更はないという。

photo 科学誌「Newton」の発行元、ニュートンプレスの公式サイト

 「Newton」は1981年に創刊後、図版やイラストを駆使した科学知識の解説で人気を獲得。帝国データバンクと東京商工リサーチによると、ピーク時の2000年9月期には24億9408万円の売上高をあげていた。しかし近年は業績が悪化し、16年9月期の売上高は約12億2800万円に低下したほか、約1600万円の赤字を計上していた。17年1月現在での負債総額は約20億円に上っている。

負債増加の理由は?

 負債が膨らんだ原因は、出版不況の影響で販売部数が落ち込んだことに加え、ニュートンプレスと資本関係にある別会社「ニュートン」の業績不振が影響しているという。

 ニュートンは、eラーニングなどの教材開発を手掛ける企業で、出資法違反容疑で2月17日に逮捕されたニュートンプレス前社長の高森圭介氏(77)が06年3月〜16年12月まで並行して代表を務めた。同社は新規事業として、iPad向け理科教材などデジタル教材の開発に取り組んでいたが、収益化のめどが立たず08年ごろから業績が悪化。事業を継続するため、ニュートンプレスからニュートンへの資金援助を継続的に行った結果、ニュートンプレスの財務状況を圧迫した経緯がある。

photo 「ニュートン社」の公式サイト

 内部での資金繰りが難航したため、10年10月ごろから高森圭介氏の主導で定期購読者から100万円単位の出資を募り、デジタル教材事業の継続を図ったが、業績は改善せず。返済期限までに資金を確保できなかった。個人からの借入金の総額は明らかにされなかったが、現時点ではニュートンに約5億4000万円、ニュートンプレスに約6億3000万円(ともに負債利子別)の負債が残されているという。

 ニュートンプレスは今後、出版事業で負った負債に加え、ニュートン分も含めた定期購読者からの借入金の全額を弁済する。高森康雄代表取締役は、「コストを削減すれば、自主再建は十分可能だと考えており、『Newton』の刊行はこれまで通り続ける。収益増のため、17年4〜5月をめどに価格帯を下げた新シリーズも発刊したい」と展望を述べた。

photo 「Newton」刊行継続を伝えるプレスリリース

 申請代理人の三村藤明弁護士は「こういった状況で自主再建を行うのは、民事再生法下では類を見ないケース。時間はかかるかもしれないが、資金を貸していただいた『Newton』の愛読者を裏切らないために、全額をきっちりと返済していきたい」と語った。

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