今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。
欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。
2017年2月13日、マレーシアのクアラルンプール国際空港で、北朝鮮建国の父・金日成の孫で、金正日総書記の長男である金正男が、女性2人に襲われて暗殺される事件が起きた。
もともと北朝鮮とマレーシアは経済を中心に比較的良好な関係を築いてきたが、今回のニュースは外交などが複雑に絡み、国際摩擦を巻き起こすような類の事件になっている。マレーシアの情報機関SBのトップも「かなり複雑だ」と言っている通り、例えば容疑者のパスポートひとつとってもすべて遡(さかのぼ)って精査し直しているはずだ。とにかく真相解明にはまだまだ時間がかかりそうだ。
この暗殺事件は驚きをもって受け取られているが、実は世界を見渡せば、この手の国家が絡んでいるとされる暗殺などの極秘工作は少なくない。「今の時代に?」と思われるかもしれないが、実際に北朝鮮にも負けずとも劣らない暗殺工作を繰り広げていると言われる国がある。イスラエルだ。
言うまでもなく、イスラエルはアラブ諸国の中にあるユダヤ人の国家だ。周囲はほとんど敵国であり、現実に過去4度にわたってアラブ諸国を相手に中東戦争を戦い、中小規模の戦闘も数多く発生している。
地政学的にも不安要素を抱えるイスラエルには、自国の存続に障害となるものに対して、極秘工作で対処してきた歴史がある。そうした任務を担うのは、映画や小説などにもよく登場し、日本でも知られている諜報機関のモサドだ。
最近でも2010年から、モサドの手によると見られる一連の大胆な暗殺工作がイランで起きている。その背景にはイラン核開発問題がある。イランでは2002年に、国内で核開発を進めていることが暴露され、国際社会から非難を浴びてきた。
この核の脅威を絶対に見過ごせなかったのが、イランの最大ライバルであるイスラエルだった。イランはイスラエルを地図上から消滅させると挑発し、イスラエルもイランの核施設への空爆も視野に入れていた。
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