『水戸黄門』の復活が、あまりよろしくない理由スピン経済の歩き方(1/5 ページ)

» 2017年03月21日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

スピン経済の歩き方:

 日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。

 「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。

 そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」に迫っていきたい。


ドラマ『水戸黄門』が6年ぶりに復活する

 先日、TBSが同局で42年続いているドラマ『水戸黄門』を6年ぶりに復活すると発表した。6代目となるご老公は、武田鉄矢さんで、2017年10月からBS-TBSで放送するのだという。

 今回、ご老公たちが旅する舞台は東北ということで、被災地の伝統芸能や工芸品、郷土料理も積極的に取り上げるらしい。そういう意味では、復興支援的な側面もあるというのは喜ばしいことだと思う。ただ、その一方で、これまでのようなノリの『水戸黄門』が延々と続いていくのはまずいと思っている。

 日本社会にまん延する「謝罪至上主義」ともいうべき病が悪化してしまうかもしれないからだ。は? なにワケのわかんないこと言ってんのと思う人も多いだろうが、「謝罪」と『水戸黄門』との関係の深さを知ってもらうためには、日本特有の謝罪文化を理解していただく必要がある。

 この国に世界的にかなり珍しい独特の謝罪文化があることは、いまさら説明の必要はないだろう。なにかやらかした企業の経営陣は、必ずといっていいほどカメラの前でズラリと並んで頭を下げることを求められる。最近では、芸能人も不倫や事故を起こすと、スーツ姿やベッキーのように清楚な装いで深々と頭を下げなくては、世間から糾弾される。

 社会のいたるところでも、「謝罪」が氾濫している。コンビニで迷惑行為を注意された客が逆ギレして店長を土下座させたことなど典型だが、SNSでも現実社会でもなにかとつけて「謝罪しろ」と迫ってくる人が増えている。「謝罪」は日本人がかかっている重い病のひとつなのだ。

 なんてことを言うと、森友学園的な方たちから「それは日本人が世界一礼儀を重んじる奥ゆかしい国民だからだ」だとか、「武士の切腹にも通じる男らしい責任感のあらわれだ」という主張がバンバン飛んできそうなので、お伝えするのも心苦しいのだが、現在のようになにかとつけて頭をペコペコ下げる文化は日本固有のものではない。

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