ソフトバンクが「社内AI」で進める営業改革Softbank Brainとは(2/3 ページ)

» 2017年03月30日 07時00分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

Brainが持つ「3つの機能」

数千種類のひな型から最適な提案書を選ぶ

 「提案アドバイザー」は、営業担当者が提案を行いたい企業名をBrainに伝えると、顧客の業種に応じて、適切な提案書などを提示する機能。Brainが選択する提案書の内容は、新規企業、既に取引がある企業、地方自治体など、訪問先の種類と関係性によって異なる。

 提案内容を絞り込む際は、Brainに「地方自治体にどんな提案ができる?」などと深堀りする質問を投げ掛けると、「『コスト削減』『業務効率化』『売り上げ向上』の中でどれを提案したいですか?」などの答えが返ってくる。顧客のニーズを踏まえて、例えば「業務効率化」を選択すると、Brainは「業務を効率化したい地方自治体のお客さまには、自治体管轄の施設にPepperを導入するご提案をしてはいかがでしょう?」などのアドバイスがもらえる流れだ。

photo 「提案アドバイザー」の画面。内容の濃い提案を可能にする

 丹羽氏は、「法人営業部の営業担当者は、ネットワーク商材やモバイル商材など1000を超える商材を扱っており、使用する提案書のひな型は8〜9000種類に上ります。そのため、提案の準備をする際、適切なひな型を探す作業に時間がかかり、業務時間を圧迫していました。この時間を削減するため、全ての提案書をBrainに機械学習させ、精度の高い回答を可能にしました」と話す。

SEからのアドバイスも貰える

 ロボット「Pepper」は、ソフトバンクの重要な商材の一つだ。だが、営業担当者は提案時に顧客から「Pepperにコスチュームを着せたいのですが、どうすればいいですか?」「Pepperを海外利用するための手続きを教えてください」などと多種多様な質問を受けることが多く、頭を悩ませていたという。対応するためには、帰社後にマニュアルを調べ直したり、エンジニアに確認したりする必要があり、手間がかかっていたのだ。

 「Pepperアドバイザー」は、そんなPepperの仕様を調べる時間を短縮するための機能だ。Brainは、Pepperの基礎的な操作マニュアルに加え、社内のエンジニアが提供した解説文を機械学習している。そのため、営業担当者は「Pepperの盗難時の対処法は?」などと不明点を質問すると、「紛失・盗難時は有償修理の対象となります。保障に加入中でも、有償となりますのでご注意ください」などとマニュアル内の記述を表示する。また同時に、「SEからのアドバイス」として、社内に在籍するエンジニアからの「盗難のリスクを減らすために、業務時間外は人目につくような場所に置き去りにしないよう注意喚起をお願いします」などの助言がスマホ上に表示される。

photo 「Pepperアドバイザー」の画面。エンジニアからの助言も表示する

 丹羽氏は、「SEからのアドバイスは、回答に説得力を持たせるための工夫です。エンジニアにアンケートを取り、営業担当者に対してよく行うアドバイスを500件ほど集めてテキスト化し、機械学習させました。本来は、シンプルな答えだけが返って来るほうがユーザーに役立つと考えていたのですが、事前のヒアリングでユーザーから『回答だけでは不安だ。どのような裏付けがあるのかも知りたい』という要望が多かったため、導入を決めました」と経緯を話す。

 企業への提案を日々行っている、法人第2営業部の田口欣永氏は、「『提案アドバイザー』『Pepperアドバイザー』ともに、外出先でも瞬時に知りたい情報が得られます。そのため、個人としては従来は1日当たり平均40分程度あった調べ物の時間を短縮できています」と効果を説明する。また、「営業の現場では、お客さんにBrainに興味を持っていただき、『画面を見せてください』と頼まれてデモを披露することも増えました。Brainのべ―スであるWatsonも商材の一つなので、そのプロモーションにもつながっています」と影響の大きさを話す。

「社員を探す」は“縁の下の力持ち”

 「社員を探す」は、16年12月に追加された新しい機能だ。「Aさんの連絡先を教えて」「B社の営業担当って誰?」などとBrainに問い掛けると、該当する社員のプロフィールと連絡先に加え、所属部署のメンバーリストがスマホ上に表示される仕組み。多くの社員が在籍し、初対面の人と仕事をすることも多いソフトバンクならではの機能だ。

 従来も社員のデータベースは存在していたが、閲覧はPCからに限定されており、外出先で急な連絡事項が生じた場合などにスムーズな検索が難しかったという。

 この機能を発案した執行役員の藤長国浩氏は「外出先からでも社員を探せる本機能は、“縁の下の力持ち”として多くの社員から支持されています。知りたい社員の情報だけでなく、チームメンバーや上長が誰なのかも分かるため、情報共有に非常に便利です」と自信を見せる。

photo 「社員を探す」の画面。「法2」と略しても理解する

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