店頭に置けば注目の的になったロボット「Pepper」。だが各地に導入が進んだ結果、ただ置けばいいというわけにはいかなくなっているようだ。このほど開かれた「Pepper」関連のイベント「Pepper World 2017」で、Pepperを活用したマーケティングに取り組む企業の担当者がPepperを活用した事例について紹介した。
「Pepperをマーケティングに導入したが、期待していたほどの成果は得られなかった」――屋内アミューズメント施設の運営を手掛けるラウンドワン 運営企画本部の永田和博氏は講演でそう語った。
同社は今年1月、「ラウンドワンスタジアム」のダイバーシティ東京プラザ店(東京都江東区)に10日間、千日前店(大阪府大阪市)に4日間、Pepperを設置。マーケティング施策の一環として、顧客リストの収集と顧客数の増加が目的のトライアルだ。
Pepperが備えるタブレット端末に、客が自分のスマートフォンの電話番号を入力すると、同社公式アプリをダウンロードできるURLをPepperがショートメッセージ(SMS)で送信。アプリを入手した客には、割り引きクーポンなどの特典を定期配信する。継続的に顧客との接点を持ち、リピーターを獲得する狙いだ。
トライアル期間中、Pepperは受け付けの隣に設けた特設ブースに配置。登録を音声で呼び掛けた。
だが──その結果、Pepper設置時のクーポンの使用率は、千日前店では通常よりも約25%低かった。また、来場者数の従来平均からの伸び率は、ダイバーシティ東京プラザ店は0.7%増、千日前店は3.5%増にとどまり、大きな変化は見られなかった。
顧客リストの獲得数は、両店舗合計で800件だったが、永田氏は「1件の獲得に約80円を要している計算になり、コストパフォーマンスが悪い。まだ改善の余地がある」と話す。
良い結果につながらなかった原因として、永田氏は「Pepperの仕様が店舗の特性と適合しなかった」とみている。「設置した店舗は、団体客が多いアミューズメント施設。Pepperと顧客が1対1で向かい合い、じっくりと操作できる環境ではない。人が多い場所では背の低いPepperは目立たず、呼びかけの声も通りづらい。顧客の列を妨げないよう、ブースをフロアの中心から外したが、逆効果だった」という。
さらに永田氏は「全国のソフトバンクショップ、空港、ショールームなどで導入が進んだため、もはやPepperは顧客にとって目新しい存在ではなくなった。珍しさだけで集客できる時期は過ぎ、設置しただけでは成果が出ない段階に入っている」と分析。大勢の顧客が訪れる事業形態でもPepperを効率よく活用するためには、「Pepperの声のトーンを調整できる機能や、地域に応じた方言を話す機能など、混雑時でも注目を集められるよう音声面を充実してほしい」と提言している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング