鉄道ファンの支持を集める「京浜急行」の秘密強みは「独自性」(1/3 ページ)

» 2017年04月24日 08時00分 公開
[小林拓矢ITmedia]

 最近の鉄道で、車両などについて他社との共通化を図ろうとする動きがある。それは、コスト削減や、相互乗り入れの利便性を考慮すると仕方のないことかもしれない。しかし、いまだに独自性にこだわる鉄道会社がある。京浜急行だ。そしてその独自性により、沿線住民のみならず、鉄道ファンの支持も集めている。

弘明寺駅を発車する京浜急行の列車

安全へのこだわり

 京浜急行といえば、まずは安全へのこだわりである。さまざまな車両が走ることで知られる京浜急行は、その関係でホームドアを設置することが難しい。しかしそのぶん、他の鉄道会社より駅員をホームに多く配置している。1日13万人ほどが利用する品川のような大きな駅だけではなく、1日5万人ほどの金沢八景のような駅でも、ホーム上に駅員が立っている。

再開発工事が進む金沢八景駅

 車両にも独特の工夫がある。普通の鉄道会社では、先頭車両をモーター付きの車両にはしない。しかし京浜急行は、モーター付きにしている。なぜか。

 衝突事故の際に、安全だからである。重い車両が先頭にあると、障害物とぶつかった際に被害が小さく押さえられるという理由だ。

 また、列車の運行管理は、コンピュータではなく、人の手で行っている。列車集中制御装置(CTC)をいち早く導入した京浜急行であっても、熟練した現場の人間がポイントや信号を操作することで、非常時に対応しやすいという論理だ。

 京浜急行の快特に乗ると、走り出してからすぐに最高速度になり、その後も十分なスピードを維持していることに気付くだろう。最高速度は、走行区間にもよるが時速120キロ。ただ、それならば並走する東海道本線や横須賀線と同じだ。

 何が違うかというと、起動加速度が違うのである。起動加速度とは、停止している状態での動力により得られる加速度のことを表し、中・低速での列車の性能を示す指標として知られている。一般に、短距離で停車と発車を繰り返す通勤電車は加速度が高く、特急型電車は加速度が低い。そのぶん、特急列車は最高速度が高い。だが、京浜急行の電車は、加速度が高く、最高速度も速い。だからすぐにトップスピードに達することができるのだ。なお最近では、新幹線車両も到達時間短縮のために加速度を高めている。

 そして、先頭車両にモーターがあることも京浜急行の「走り」の性能を高めるために大きく貢献している。モーター付き車両が先頭と最後尾にあることで、ポイント通過の検知を確実にできる。そのことにより、通過したらポイントをすぐに切り替え、その次の列車を待たせずに走らせることができるのだ。

 京浜急行の路線には、羽田空港方面行きを中心に多くの相互乗り入れ車両が走っている。その車両も、先頭車両にモーターを付けるという原則を守らせている。

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