ダイハツとスズキは長らく宿命のライバルだった。車名で言えば、ミラとアルトである。トヨタアライアンスの中で少々ややこしいのは、この得意分野が重複する2社が今後どうすみ分けていくかだ。マーケットで言えば、ASEANに強いダイハツと、インドに強いスズキなのだが、それを分けているのは販売力である。製品を一本化したら成り立たないかと言えばそうではない。
仮にトヨタが今後スズキを子会社化し、ミラかアルトかどちらかに一本化するというようなプランを進めれば大波乱を引き起こすだろう。スズキは今後の提携交渉の中でそういう事態を避けるための万全の注意を払うだろうから、現時点での順当な予想としてはスズキはトヨタの子会社化を避けるだろう。
これは筆者の見方に過ぎないが、スズキにとってトヨタアライアンス参加の最大のメリットは、カリスマである御年87歳の鈴木修会長の継承問題が大きいのではないかと考えている。2000年に一度社長から身を引き、会長に就任したが、2008年に社長兼会長に返り咲いている。カリスマの後継は非常に難しい。外部から後任を入れたいと考えたとすれば、トヨタは理想的な相手だ。
現時点では、トヨタにとって資本支配関係のあるダイハツとスバル、それがないマツダとスズキの間には事業戦略上の明確な線引きがあって、過渡的な状況にある。
いずれにしても各社の提携の際に必ず言及された「先端技術と環境技術」というキーワードが、トヨタアライアンスにとって重要なことは間違いない。官民一体で音頭をとるドイツに対して、資本と技術で合従連衡していく日本のやり方のほうが多様性があるのではないかと見ているところだ。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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