GMS大量スクラップ時代の風に乗るドン・キホーテ小売・流通アナリストの視点(1/4 ページ)

» 2017年06月28日 07時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

 6月13日、ユニー・ファミリーマートホールディングスとドンキホーテホールディングスが業務提携に向けた検討を始めると発表した。店舗や商品の共同開発、物流の合理化といった幅広い分野で、半年以内をめどに具体的な提携内容を詰めるという。

 業界内外の反響は大きく、おおむねその効果に期待する向きが多いように思われる。双方の業態が異なるため競合する分野が少なく、相乗効果を得られるのではといった好意的な見方が多いようだ。

ユニー・ファミリーマートHDと業務提携の検討を始めたドンキホーテHD ユニー・ファミリーマートHDと業務提携の検討を始めたドンキホーテHD

 ユニー・ファミリーマートといえば、最大の課題は総合スーパー(GMS)部門の再構築が自他ともに認めるところであろう。セブン‐イレブン、ローソンを追撃するためにどうしても手に入れたかったサークルK・サンクスをグループ化することを優先し、ユニーグループ丸ごとでの経営統合を果たしたファミリーマートおよび伊藤忠商事陣営はGMSという難題を抱えざるを得なかった。

 コンビニ大手、大手商社といえども、GMSという業態に関する運営ノウハウは持ち合わせているわけではない。グループシナジーの活用、店舗改装、専門店と組んだ新たな直営売り場への取り組みといった施策を打ち出してはいたが、業態として不振が続くGMSの活性化策としては力強さを欠くものであった。そこに、乾坤一擲(けんこんいってき)の一手として投じられたのが、今回のドン・キホーテとの業務提携であり、事実上、ドン・キホーテの手にユニーの運命は託されたということになる。

 なぜドン・キホーテかと言えば、答えは簡単で、店舗再生に関して最も実績を持つ企業であるからである。

 そもそも小売りの店舗戦略には、スクラップ&ビルドという大原則が存在する。時間経過とともに変化する環境の下、その時々に合った適正な業態や店舗形態に変わっていくことは必然だからである。そのため、振り返ればどの時代にもスクラップ店舗に居抜き出店することを得意とする企業が存在していた。

 例えば、家電量販店の覇権争奪戦が行われていた時代、初期に各地で勃興した小型店舗家電量販店群に対し、大型店を擁したコジマが圧倒し業界最大手の地位を築いた。そのコジマもさらに大型店のヤマダ電機に敗れ、ビックカメラの傘下に入ることとなった。この間、同業界の敗者企業からは、スクラップ店舗や業態転換店舗が大量に発生した。こうした物件を吸収して成長したのが、ブックオフ、ハードオフといったリサイクルショップチェーン、もしくは業務スーパーといった価格志向型の企業であった。店舗コストを抑えて、低価格で商品を提供する仕組みを持った企業が居抜き店舗の活用で立地を再生してきたのである。

 その中でも最も成長し、今もなお成長基調を維持している有力企業と言えば、ドン・キホーテをおいてほかにはないであろう。「MEGAドン・キホーテ」という大型店フォーマットを持ち、GMSクラスの大型店を立地再生可能な企業として定評がある。破たんした長崎屋を傘下で再生させたノウハウは同業他社では持ち合わせていないと言ってもいい。

 この会社のすごさは、再生する前のGMS店舗とほぼ同様の商品ジャンルを売っているにもかかわらず、再生を果たす力を持っているという点にある。ドン・キホーテといえば、ディスカウントストアの最大手というイメージが定着しているため、価格訴求によって集客を図るからだと考えがちであるが、それだけではない。

 今回は、このドン・キホーテの再生力の源泉について考えてみたい。

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