しかしながら、当時このエリアは観光地としてはいまひとつで、来訪者は一部の山好きや、乗馬好きなどに限られていた。ゴールデンウィークや夏の心地良い時期はそれなりににぎわうものの、夏が終わると寒さが厳しくなり、ほとんど観光客は立ち寄らないような場所だった。コテージなど小規模な宿泊施設ならまだしも、100室を超えるようなこのホテルを年間を通して安定稼働させるのは難しく、開業早々から赤字体質の経営だったという。
さらに追い打ちをかけるように、01年にマイカルが経営破たん。これによって売りに出された同施設を買い取ったのが星野リゾートなのである。同社にとって運営の第1号案件だった。
当時から星野リゾートに在籍していたリゾナーレ八ヶ岳の長屋晃史総支配人はこう振り返る。
「決して小さくはない規模のホテルであり、観光に恵まれたエリアではなかったため、誰もこの施設の運営、再生に手を挙げませんでした。けれども、運営会社として舵を切った星野リゾートは、大きな成功事例を作らなければ発展しないという強い思いもあり、案件に乗り出したのです」
いざ、再生に向けて取り組みを開始した。目指すべき姿は「ファミリーリゾート」。実はそれを裏付けるデータがあった。
日本人が旅行する目的に関して同社が調査したところ、1位は「温泉巡り」、2位が「観光地・史跡巡り」、そして3位が「家族の思い出作り」という結果が出た。さらに、温泉や観光地・史跡巡りを1位にしなかった人たちの属性を調べると、未就学の子どもを持つファミリー層が圧倒的多数で、しかも関東在住の人たちは2時間圏内を旅先に選んでいた。リゾナーレ八ヶ岳は、都内からクルマでも鉄道でも約2時間でたどり着く場所である。ファミリー層にとって魅力的な施設にすればきっと成功する――同社はこう確信した。
ただし、単なるファミリー向けでは弱い。子どもたちが楽しめるだけでなく、その親をはじめとした大人たち、とりわけ女性が快適に過ごせるような「大人のためのファミリーリゾート」にすれば、新しい印象を世の中に与えられるのではないかと考えた。
観光不毛の地というデメリットについては、「だったら自分たちで観光地化してしまえばいい。人々が来たくなるようなコンテンツを作ればいい」と前向きにとらえた。
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