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» 2017年07月07日 07時00分 UPDATE

杉山淳一の「週刊鉄道経済」:小田急電鉄「保存車両全車解体」デマの教訓 (5/5)

[杉山淳一,ITmedia]
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小田急博物館の早期整備を願う

 小田急電鉄は在庫整理を完了しても15両を大切に保存する。博物館が成立する数だ。京王電鉄は開業100周年を記念して、2013年に「京王れーるランド」を開業した。歴代の電車5両を展示している。東急電鉄は1982年、創立60周年を記念して「電車とバスの博物館」を開館。電車2台と一部カットされた電車2台、バス2台を展示している。東武鉄道は創立90周年を記念して、1989年に東武博物館を開館した。蒸気機関車2台、電気機関車2台 電車3台、貨車1台、バス、ロープウェイ搬器を展示する。小田急博物館を作るとしたら、これらよりも大きな規模になるだろう。

 生方氏によると、鉄道博物館の構想はあるという。候補地として海老名駅付近の小田急線とJR相模線の線路の間のあたりが検討されたことがある。しかし、小田急電鉄にとって負担が大きいうえに、地元自治体からの支援協力面などで課題が多く、実現は未定。10年後には開業100周年の節目を迎える。記念事業として開館を期待したい。

 しかし、建屋を作り、維持管理し、学芸員などを常駐させるとなると、年間の費用も膨大だ。おそらく、前述の私鉄系博物館は利益を出してはいない。小田急博物館について試算したところ、見込まれる入場者数で赤字を出さないためには、入場料が1人5000円くらいになってしまうという。現実的ではない料金だ。

 「これでは沿線の人々に親しんでいただく施設にはなりません。ただし、博物館は収支が償うものではありません。文化的、産業的遺産の保存、鉄道技術の伝承、地域との密着、そして、会社と利用者のつながり、具体的には鉄道事業への理解と愛着を得るためにあります。さらに、用地買収に始まる地域とのかかわりや官庁提出書類などの保存資料の解析、技術の開発と伝承の記録の公開など、学術的責務も多い施設です」(生方氏)。

 小田急電鉄単体での事業化が難しければ、多くの鉄道ファン、小田急ファンの協力を仰ぐ手法も検討してはどうか。車両保存の資金をクラウドファンディングで集める手法は珍しくない。鉄道会社、自治体、鉄道ファンの“みんなでつくる博物館”は、小田急電鉄なら可能かもしれない。

 それぞれの時代の証人となる方々は高齢になりつつある。他界によって記憶も資料も散逸してしまう。失礼ながら、生方氏もお元気とはいえ90歳を超えておられる。館長、名誉館長にふさわしい方だ。小田急電鉄には、創立100周年を待たず、一刻も早く小田急博物館事業に着手してほしい。

photo 「小田急バーチャル鉄道博物館」。CGで歴代車両を再現しており、好みの視点で眺められる。しかし、実物に触れることも大切だ
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