下図は、1980年以降の百貨店の商品別売り上げ構成比の推移。大まかに言えば、百貨店が総合小売業から婦人ファッション、ブランド品、化粧品の販売店になってきた経緯が見てとれる。昭和50年代〜バブル期には、専門店に押され始めた家具、家電、紳士服などを縮小して婦人服、関連雑貨に大きくシフトした。バブル後には低迷する婦人関連商品を補うため、ブランドブームに乗って、ブランド品売り場を拡大することで延命を図った。
百貨店商品別売り上げ構成の推移
しかし、大衆顧客層、若年顧客層の客離れに対して抜本的な対策を取ることができないまま、ブランドブームが終わると、中高年女性、および富裕層に依存する傾向はさらに強めていく。
すべての時期を通して拡張傾向にある食料品は、いわゆるデパ地下強化の結果であるが、百貨店にとってデパ地下は来店誘致のためのサービスのような存在であり、食料品比率の上昇は収益低下につながる頭の痛い話でもある。
こうして百貨店は自ら商品と顧客を絞り込んで、縮小均衡を続けてきた。売り上げ減少に歯止めがきかない中、インバウンド消費の追い風が到来した百貨店は、まさに免税売り上げによって足元の業績を支えられているのだ。訪日外国人の増加は当面続くことが予想されており、「爆買い」はなくなったとしても、インバウンド消費が引き続き百貨店にとって有望なマーケットであることは間違いない。
ただ、これまでの経緯から懸念されるのは、インバウンドを頼り、国内既存顧客の客離れに対する危機感が希薄化することである。シェア5%前後のインバウンドはカンフル剤であって、百貨店の永年の課題である国内の減収をすべて補完するほどの効果はない。インバウンドが与えてくれた時間を有効に使わなければ、いつか来た道はまた繰り返される。
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