ヤフー通販の広告問題 宮坂社長「メディアと小売りは別物」「ステマ」指摘も

» 2017年07月29日 10時50分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

 メディア事業では王者であるヤフーが、「追う立場」としてコマース事業に更に力を入れる。楽天やAmazon.comといった巨大なプレイヤーが立ちはだかり、スタートトゥデイの「ZOZOTOWN」やフリマアプリ「メルカリ」も競合となる激戦区で、ヤフーは独自の戦略で成長を遂げている。

 その一方で6月には、「Yahoo!ショッピング」の広告枠についての問題が立ち上がった。ヤフーはどういったスタンスでコマース事業を展開していくのか。7月28日の決算会見で宮坂学社長が語った。

注力分野のコマース事業。業績好調の一方で、広告に関する問題が指摘された

安定成長のメディア広告事業、更に注力するコマース事業

 2017年4〜6月(18年3月期第1四半期)の連結業績は、売上高は2127億円(前年同期比4.2%増)、営業利益は522億円(2.6%増)、純利益は359億円(1.1%増)だった。

 メディア事業は安定。スマートフォン向けの動画広告などが好調で、スマートフォン広告の売上高比率が54.8%と初めて5割を超えた。売上高は675億円(3.2%増)、営業利益は383億円(0.5%増)だ。

 その安定事業と並ぶ“2本目の柱”として育ったのがコマース事業だ。売上高は1422億円(4.7%増)、営業利益は249億円(13.8%増)と大きく成長している。「Yahoo!ショッピング」の商品数は2億9000万点を突破し国内最多に。購入者数と取扱高も増加を続けている。「Yahoo!オークション」も“競り”のない即決価格で取引ができる「フリマモード」を開始したところ、新規の出品者数が過去最高になったという。

ヤフーの収益の柱はメディア事業とコマース事業

 大きくアピールするのは、出品料、出店料、手数料が無料であること。また、Yahoo!プレミアム会員(有料会員)とグループ会社のソフトバンク会員を対象にポイント還元などの優遇施策を実施し、ユーザーの囲い込みを狙う。ソフトバンクとの提携は前期から行っているが大きな効果を上げているといい、Yahoo!プレミアム会員のID数も前年から約500万人増の1692万人となった。

 ポイント還元などのコストはかかっているが、大きく伸びているショッピング広告売上高が支え、「単体で見れば持続可能なビジネスモデルになってきている」という。ヤフーはカード事業も展開しているため、将来的にはカード決済手数料なども加わり、収益源が重層的になることを目指す。

カード事業とのシナジーも狙う

「売れている順」問題は?

 業績が順調な一方で、6月にはYahoo!ショッピングの広告枠が問題視された。商品を売り上げ上位から閲覧できる「売れている順」で検索した際、検索結果よりも上に広告枠「アイテムマッチ」が表示されるようになっていた。広告枠は通常の検索結果と判別しづらいデザインで、消費者が広告商品を「売れている商品だ」と間違える可能性があった。

 「ステルスマーケティング(ステマ)ではないか」「優良誤認にあたる」という指摘もあり、ヤフーはアイテムマッチの広告枠を撤廃。名称を「ストアのオススメ」に変更し、広告を掲載する位置を「売れている順」から「おすすめ順」へと変更した。メディア事業ではステマに対して厳しい態度を見せるヤフーだが、この一連の問題を宮坂社長はどのように捉えているのだろう。

 宮坂社長は「出展料・出品料無料のモデルは日本では初めて。それを発展するため、中には行き過ぎたこともあるのでは」と認めつつ、検索結果に広告枠を表示することは問題がないとした。

 「ヤフーとしては、メディアの面の編集と、小売りの面での編集は別物だと思っている。“いいものをお得な価格で届ける”という使命を持ち、お得を実現するためにビジネスをしている。小売りではそのためにさまざまな販売促進活動が発明されてきて、ヤフーでも取り入れられるものは取り入れたい。小売りにおいては、商品1つずつに『この商品は広告や販売促進料をもらっている』という記載は必要ないという判断をしている」

 これまで「売れている順」を広告枠と知らずに取引をした消費者も少なくない。そうした消費者に対しては「(広告だと捉えられていないと)もう少し早く気付けばよかったと反省している。今回のご指摘は非常にいい機会だった。意見を聞きながら、よりよい売り場を作っていきたい」とコメントした。社外の有識者が参加する会議の場を設けたとしている。

 「アイテムマッチ」広告枠の撤廃による広告額や流通額への影響は「特にはない」という。また、Yahoo!ショッピング全体の信頼性は、広告主を限定することで担保する。「ヤフーの広告枠は誰でも買えるわけではなく、限られた売主さんに商品を解放している。さらに規約や法律に違反するものは売れないようにしている。お金を出せば広告が出せるというわけではない」という。

 18年3月期の連結業績予想は、売上高は前期を上回る見込みだが、ビッグデータとコマース事業への投資を強化するため、営業利益は1750億〜1850億円と減益を見込む。

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