2016年の暮れも押し詰まった12月27日、スズキは主力小型車であるスイフトをフルモデルチェンジして発売した。国内ではBセグメントのコンパクトな5ドアボディ1種類(インドではセダンの設定あり)。搭載するエンジンは2種類で、1リッター3気筒直噴ターボエンジンと、1.2リッターエンジンに発電機兼用のモーターとリチウムイオンバッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッドという構成だった。
新型スイフトは新旧最軽量モデル比で120キロもの軽量化を果たした新プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」をひっさげ、「走る、曲がる、止まる」というクルマの基本性能を向上させた意欲作と言える。若干古典的な動力特性のターボと比べると、実用域でのリニアな加速感に優れるマイルドハイブリッドは毎日の相棒としてなかなかの佳作モデルだ。
ところが、スズキはそれから約半年後の7月12日、今度は発電機兼用ではなく、駆動専用のモーターを搭載したストロングハイブリッドモデルを発売したのである。
余談になるが、教科書的にはマイルドハイブリッドとはモーターのみでの走行ができず、モーターはあくまでもエンジンの補助として使われるタイプのハイブリッドで、ストロングハイブリッドはモーターのみでの走行も可能なモデルを言う。
マイルドが付くか付かないかで一応の違いはあるにしても、消費者にとっては何が違うのかが少々分かりにくい。価格を見てみればマイルドハイブリッドの最廉価モデルが162万5400円、対して(ストロング)ハイブリッドの最廉価モデルは166万8600円。差額は4万3200円と大した差ではない。
ところが、走ってみるとこれが大違いなのだ。それはスズキが発明した「コロンブスの卵」とも言える新しいハイブリッドシステムのお陰である。
スズキのアイデアの核となるのは、スズキがオートギヤシフト(AGS)と呼ぶ、ロボタイズド・マニュアルミッションだ。聞き慣れない言葉だろうが、人間がクラッチを踏んでシフトレバーを動かし、マニュアルトランスミッションを操作する動作を模倣し、油圧や電動のアクチュエーターでクラッチとシフトを操作して旧来型のマニュアルミッションを制御するタイプの自動変速機だ。
ロボットにマニュアルトランスミッションのシフト操作を代行させるのでロボタイズドとかロボット変速と呼ばれる。このあたり用語が統一されてないので名前がいろいろあってややこしいが、「ロボタイズド」「ロボット変速」「AMT(オートメーテッド・マニュアルトランスミッション)」などが一般名称、スズキの商品名が「AGS」ということになる。名前がブレるのは普及していないからだ。ここではAMTに統一する。
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