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» 2017年08月14日 06時10分 UPDATE

池田直渡「週刊モータージャーナル」:驚愕の連続 マツダよそれは本当か! (1/4)

マツダが2030年に向けた技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言 2030」を発表。この中で、最も注目されたのは「内燃機関の革新」の中核となるSKYACTIV Xだ。かねてよりマツダが研究中と伝えられてきたHCCIエンジンがいよいよそのベールを脱いだことになる。

[池田直渡,ITmedia]
エンジンからスタートし、今やトランスミッションや、サスペンションなどクルマを構成するすべての要素に広がったSKYACTIVだが、クルマ1台まるごとをSKYACTIVコンセプトにしたのは2012年登場の初代CX-5からだ エンジンからスタートし、今やトランスミッションや、サスペンションなどクルマを構成するすべての要素に広がったSKYACTIVだが、クルマ1台まるごとをSKYACTIVコンセプトにしたのは2012年登場の初代CX-5からだ

 8月8日、マツダは2030年に向けた技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言 2030」を発表した。

 基本方針は、2007年に発表した「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言」の延長線にあるものだ。内容は3つに分かれる。

(1)環境対策

(2)安全対策

(3)走る歓びによる心の健康

 (1)の環境対策については、「Well-to-Wheel」(燃料採掘から車両走行まで)での企業平均二酸化炭素(CO2)排出量を2030年までに、2010年比で50%、2050年までに90%削減という大胆な目標が設定されている。

 日本企業の場合、すでに生産設備などの常識的な環境対策は80年代から着々と実施済みであり、例えば中国あたりのように環境を軽視してやりたい放題の政策を取ってきた状態からの削減ではない。日本は90年ごろにはすでに先進各国が目標とすべきラインを実現していたのだ。「乾いた雑巾を絞る」という言葉を思い浮かべる。にもかかわらず、マツダが10年比で50%、90%という無茶とも思えるほどの強烈な数値目標を自ら掲げたことには衝撃を受けた。正直なところ信じ難い思いである。

 もう1点、マツダらしいポイントはWell-to-Wheelにある。これはマツダが従来から唱えてきた主張で、現状において、インフラ発電が化石燃料頼りであるにもかかわらず、クルマの走行部分だけを切り出して、ゼロエミッションを主張する電気自動車勢に対して、「そんな欺瞞(ぎまん)でいいのか!」という指弾がのど元まで出かかっているように筆者には見える。

「地球」の課題解決のアプローチ 「地球」の課題解決のアプローチ

 急速に進歩を遂げつつある現在の最先端ガソリンエンジン車、あるいはハイブリッド車は、Well-to-WheelのCO2排出量はすでに相当に低く、現状を前提にすればインフラ発電経由の電気自動車におけるWell-to-WheelのCO2発生量と変わらないか、逆に少ないくらいの水準に達している。イメージ的に言えば、電気自動車が削減したCO2はそっくりそのまま発電所に付け替えられて、発電所でまとめて排出している状態だとも言える。

 もちろんこのあたりは考え方にもよる。発電所にまとめて、そこで低減策を講じていけば、現状では欺瞞でも技術の進歩によって欺瞞でなくなる日は来るだろう。風力、水力、太陽光や原子力。あるいはCO2回収装置付きの火力発電なども技術的にはすでに完成しているのだ。後はものによってコストと稼働の安定性が課題である。

 冷静に見ると、電気自動車でのCO2削減は結局のところインフラ発電の低炭素技術に依存したものであり、CO2を削減したのが一体誰なのかを考えれば、その主役が自動車メーカーであると言えるのかどうかは疑問だ。

 さて、マツダの環境技術の具体策としては、19年から電気自動車など電動化技術を追加しつつ、本命である内燃機関の改革を行うというものだ。なぜ内燃機関が本命かと言えば、環境技術は普及しなくては意味が無いからだ。いくら素晴らしい環境性能でも、高価で小数しか売れないクルマでは地球環境は変わらない。安価でインフラの充実を待たずに今すぐ使い倒せる環境技術でなければ普及はおぼつかない。マツダは今回の長期ビジョンの中で、「内燃機関自動車は、将来においても世界的に大多数を占めると予測され、(内燃機関の効率化は)CO2削減に最も寄与すると考えられる」とアナウンスしており、それは筆者も同意である。

環境技術の採用拡大予測 環境技術の採用拡大予測
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