インタビュー
» 2017年08月20日 06時00分 UPDATE

競泳で活躍:オリンピックの経験を接客に 星野リゾート・山口美咲さん

北京そしてリオデジャネイロと、オリンピックに2度出場した元競泳選手の山口美咲さん。今年4月から星野リゾートの日本旅館「星のや東京」で正社員として働いている。アスリートからの転身の思いを聞いた。

[伏見学,ITmedia]

 ホテル・旅館運営の星野リゾートがトップアスリートの社員採用を始めた。北京オリンピックおよびリオデジャネイロオリンピックに出場した元競泳選手の山口美咲さんが2017年4月に入社した。現在は東京・大手町にある日本旅館「星のや東京」で正社員として勤務する。

元競泳選手の山口美咲さんは、第2の人生を星野リゾート社員として送っている。写真は大学生向けに開かれたワークショップでの1コマ 元競泳選手の山口美咲さんは、第2の人生を星野リゾート社員として送っている。写真は大学生向けに開かれたワークショップでの1コマ

 山口さんは、日本オリンピック委員会(JOC)が提供する引退アスリートのセカンドキャリア支援制度「アスナビNEXT」を利用して星野リゾートのインターンシップに参加。元々、サービス業に興味があったという山口さんは、星野リゾートはアスリートの時と同じように世界と戦える、自分が成長できる場だと感じて入社を決意。アスナビNEXTの第1号案件となった。

 慣れない職場環境に最初は苦労の連続だった。特に立ち振る舞いや所作、言葉遣いは何度もフィードバックを受けた。「昔から私は肩で風を切るような、特徴的な歩き方でした。リアクションは大きいし、丁寧語や謙譲語も話せませんでした。星のや東京に入ってすべて直さなくてはいけないのが大変でしたね」と山口さんは振り返る。

 少しでも早く直そうと、日常生活の中から意識するようにした。徐々に同僚から「良くなったね」と声を掛けられるようになり、ついにはお客さんにも立ち振る舞いを褒められるようになったという。

 仕事そのものは楽しくてたまらないといった具合だ。失敗することもあるが、「それを引きずることはありません。反省して次に生かす努力をします」と山口さん。そうしたメンタル面の強さ、前向きな姿勢はアスリートでの経験が大いに生きている。

個人からチームへ

 山口さんのアスリートとしての実績はピカイチだ。1990年1月生まれの山口さんは生後10カ月からスイミングを始めた。その後、競泳選手として数多くの国際大会で活躍し、2009年には100メートルで自由形日本記録を樹立した。オリンピックにも2度出場。08年の北京オリンピックでは200メートルのフリーリレーで7位入賞、16年のリオデジャネイロオリンピックでは100メートルフリーリレーで8位入賞した。

気持ちの切り替えは早かったと山口さん 気持ちの切り替えは早かったと山口さん

 アスリートとしての人生はリオデジャネイロオリンピックで終止符を打った。引退時は涙したが、「これからのワクワク感や楽しみのほうが大きかったので、(アスリートから会社員への)気持ちの切り替えは早かったです」と山口さんは笑顔で話す。

 アスリート時代との一番の違いは、個人のためからチームのためへと意識が強く変わったことだ。かつてはとにかく自分自身が速く泳げるようになることが最優先だった。しかし今は、宿泊するゲストのために他の社員とチーム一丸で仕事することが求められる。戸惑いはなかったのだろうか。

 「チームの中で自分がしなければならない役割を明確に指示してもらえるので、意外とギャップはありません。そこに向かって一生懸命やるだけです」

 また、アスリートのときにチームワークの大切さを痛感した経験も役に立っているという。北京オリンピック出場、そして日本記録達成と、競泳選手として勢いのあった山口さんだが、12年のロンドンオリンピックには出場できず、大きな挫折をする。それまではあくまで自分のために泳ぐという意識が強かった山口さんは、挫折の中で初めて自分を支えてくれる周囲のありがたみを感じたという。

 「励ましてくれる人もいれば、練習に付き合ってくれる人もいます。この人たちのために、次のリオデジャネイロオリンピックは絶対に出たいと心の底から思ったのです」

 そして見事オリンピックに出場。その経験が個人プレーからチームプレーへと、山口さん自身の考え方や行動を大きく変革したのだった。

星のや東京 星のや東京

 現役を引退したアスリートたちが、自信を持って新しいキャリアを歩めるような、そんな成功事例になりたい――。こう語った山口さんは今日も仲間たちとともに、星のや東京のお客さんに精一杯尽くしているのだ。

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