路面電車を残した地方都市の共通点小売・流通アナリストの視点(1/3 ページ)

» 2017年09月20日 06時30分 公開
[中井彰人ITmedia]

 地方都市の中心市街地が衰退したと言われるようになって久しい。

 実際、さまざまな地方都市を訪れてみても、場所によっては県庁所在地のアーケード商店街に人がほとんど通っていない、というケースも少なくない。こうした風景を目にしたり、映像をテレビなどで見たりすることがあれば、地方都市は廃墟になりつつあるように感じられるかもしれない。

 ただ、冷静に考えれば、シャッター商店街を抱える街だからといって、人口が10分の1に減少している、ということではなく、人々が中心市街地を歩いていないだけなのである。それが証拠に、街を歩いている人はいなくても、周辺道路を見れば、ひっきりなしにクルマが通っているはずだ。

にぎわいを見せる熊本市の中心市街地 にぎわいを見せる熊本市の中心市街地

 見た目の街のにぎわいとは何か? それは単純に人が歩いているか否か、ということになる。歩いている人が多い、とは街に用がある人が多いという以上に、地域の公共交通が機能していて、交通ハブである中心市街地を経由して目的地まで行っている人がどれくらいいるかによって決まってくる。中心市街地の衰退とは、街の交通ハブ機能が失われたことによって、そこを通る人が減少した、ということなのである。

 そして、その主要因は、地方都市がクルマによる域内移動を是としたことである。元々、公共交通の利便性が低い地方においては、パーソナルな移動が自由なクルマが普及すれば、公共交通を利用する人は減少し、その影響から公共交通の運営基盤が傾き、利便性がさらに悪化し、利用者の減少に拍車がかかる、という負のスパイラルが進行し続けた。こうして、クルマ移動が主流となった地方においては公共交通のハブ機能が失われ、中心市街地の存在意義自体が希薄となったのである。

 ただ、その衰退度合いにはかなり差があり、中心市街地が存在感を維持している街もないわけではない。そうした街にある程度共通する要素とは、「路面電車」の存在である。

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