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» 2017年10月05日 06時30分 公開

ボタンを押すだけで会話を翻訳:翻訳デバイス「ili」が示すインバウンド事業の未来

「京都スマートシティエキスポ2017」で開催された講演に、ログバーの山崎貴之COOが登壇。スティック型の音声翻訳デバイス「ili」を活用した訪日外国人向け施策に関する説明を行った。

[濱口翔太郎,ITmedia]

 ベンチャー企業のログバーが発表したスティック型の音声翻訳デバイス「ili(イリ―)」。ユーザーの発話を瞬時に翻訳する魔法のようなデバイスとして鳴り物入りで登場してから約9カ月。現在はどのように活用されているのだろうか。(関連記事

 先進技術を活用した街づくりなどに関する展示会「京都スマートシティエキスポ2017」で講演した、ログバーの山崎貴之COOのセッション「観光立国日本の街づくりと多言語翻訳デバイスili(イリー)」を取材した。

photo ログバーのスティック型の音声翻訳デバイス「ili(イリ―)」(=1月の製品発表会で撮影)

約0.2秒で他言語に翻訳、オフラインでも使用可能

 山崎COOによると、発表後に試行錯誤を重ね、観光事業者など法人向けiliの発売に至ったのは6月。一般向けiliは未発売で、現在はさらなる品質向上に向けて開発中という。

 現在の仕様は、ボタンを押しながら話しかけると約0.2秒で他言語に翻訳し、合成音声で発話する。現在は日本語、英語、中国語に対応しており、年内にも韓国語に対応する予定だ。

photo iliの使用方法(=ログバーの公式サイトより)

 旅行中の日常会話に特化しており、話しかけた内容を内蔵辞書と照合して適切なフレーズを発話する仕組み。通常時はオフラインで使用可能だが、インターネットに接続することで会話のログデータをクラウドに送信したり、内蔵辞書をアップデートしたりすることが可能だ。

photo iliの特徴(=ログバーの公式サイトより)

 ログバーがiliの開発を始めたのは2015年。山崎COOは「15年は観光庁が日本版DMOの設立を始めたほか、訪日外国人数が出国する邦人数を上回ったため、観光分野が注目を集めていた。そこで、テクノロジーの力で訪日客との交流を促すデバイスを生み出したいと考えた」と背景を話す。

別府でプロジェクトを展開

 観光地での実用性をより高めるため、9月からiliを大分県別府市に提供。試用プロジェクト「友達都市(TOMODACHI-CITY)」を展開している。

 プロジェクトでは、別府で人気の観光スポットやホテル、土産物店にiliを提供し、地元スタッフと訪日外国人の両方に貸し出す施策を進めている。

 提供しているiliの内蔵辞書には「地獄めぐり」「関サバ」「海地獄」など別府ならではの固有名詞を追加し、難易度の高い会話に対応。スタッフ側はおすすめの観光スポットや商品の紹介などが、外国人客側は細かな不明点の質問などが可能になるため、コミュニケーションの円滑化が期待できるという。

photo 取り組みの狙い

 また、並行して日々の会話データを取得しているため、データを踏まえて内蔵辞書をより役立つものに更新できるという。

 さらに、外国人客の飲食店への来店を促進して地域経済を活性化するため、プロジェクトでは「アクセプタンスマーク」と呼ぶ標識を店舗入り口に掲示する施策にも注力していく予定。

 iliのモチーフの隣に各国の言葉で「英語・中国語・韓国語に対応済み」と書かれた標識で、外国人客の不安感の解消が目的。これまで外国語を話せるスタッフがおらず、来店者が少なかった店舗など掲示していく。店舗内ではiliを活用して「この料理はおいしいですよ」「これ食べてみてください」などの会話を実現し、接客の質を向上させるという。

photo アクセプタンスマーク(=ニュースリリースより)

今後は実施都市を拡大、別事業への応用も

 ログバーは今後、こうした試用プロジェクトをさまざまな都市で展開し、課題点を踏まえて法人向けサービスを改善していく予定。内蔵辞書の拡充にも注力し、20年までに1台当たり90万単語の抽出を目指す。取得した言語データを分析し、マーケティングなど別の事業にも生かしていく方針だ。

 山崎COOは「現時点での対応分野は旅行のみだが、今後は交通事業や製造業の現場に適したサービスも開発したい。iliを使用すれば採用時の意思疎通もスムーズになるため、外国人の雇用促進にも生かしたい」と展望を話す。

 「形状も改良を重ねる予定で、未来のiliは耳に装着する形になっているかもしれない。どのような形になったとしても、外国語が苦手な人でも海外の方と笑いあえるような端末に育てていきたい」

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