宇都宮LRTの目玉は何か、不安は何か2022年に開業(3/4 ページ)

» 2018年01月03日 07時47分 公開
[土肥義則ITmedia]

不安材料は2つ

 現時点で、宇都宮LRTの工事は始まっていない。国の認可が下りれば工事を着手する流れだが、すでに経済効果が出始めている。工業団地の近くにテクノポリスというエリアがあるが、そこの人口が増え、市内で30年ぶりに小学校ができる予定だ。また、沿線の地価が上昇したほか、マンションやビジネスホテルの建設も予定している。

 宇都宮LRTが完成すれば、いいことばかりじゃないか。移動時間は速くて安くなるし、道路の渋滞も緩和される可能性が高い。沿線の地価が上がって、人口も増えている。明るい未来を描けそうな感じもするが、その一方で不安材料が2つある。ひとつは、敷設エリアだ。宇都宮駅の中心街は西側である。商業施設も多いし、クルマの走行も多いし、人の数も多い。いわゆる“宇都宮餃子”を目当てに訪れる観光客の多くは、LRTが走行する“反対側”で時間を費やすのだ。

 この疑問を投げかけたところ、吉田さんは「将来的に、中心市街地がある西側にも乗り入れる予定だ」という。もともと、駅の西側にもLRTを走行させる予定だったが、バス会社や市民などからの反対があって、話し合いが難航した。そこで、国交省から認可を受けている東側から話を進めていったわけだ。現在、宇都宮市駅から西に約3キロメートル延伸する計画を進めていて、今後はLRTとバスをどのように役割分担をしていけばいいのか、トランジットセンターをどこに配置すればいいのか、といった問題を検討していくという。

 もうひとつは、利用者数についてだ。アンケートを実施したところ、1日当たりの利用者は平日で1万6318人、休日で5648人。この数字を確保すれば採算をとれるというが、結果を額面通りに信じていいのだろうか。公共事業の場合、需要予測と実際の数字に大幅な乖離(かいり)があることはよくあることだ。この懸念に対し、宇都宮市の担当者は「調査を行ったのは2014年。このときに『絶対に乗る』と答えた人だけの数字なので、最小限の人数だと受け止めている」とのこと。

 「じゃあ、大丈夫なのでは」と思われたかもしれないが、宇都宮が“クルマ社会”であることを忘れてはいけない。宇都宮市と芳賀町の住民に主な移動手段を聞いても「クルマ」を挙げた人は68.2%、「鉄道」と答えた人はわずか2.5%。「LRTが完成したからといって、『鉄道』を利用する人が10〜20%になることは難しい。時間があるときには『LRTに乗ってみようか』という人を増やしていかなければいけない」(吉田さん)

宇都宮LRTのトランジットセンターができれば、利用者は便利になりそう

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