一方、筆者は、このプロジェクトによって自治体間の競争の適正化と、都市部住民が抱える課題解決につながることに期待している。
東京23区で構成する特別区長会は、「ふるさと納税」に関する要望(17年3月23日提出)において、待機児童対策に必死に取り組んでいる特別区にとって、ふるさと納税による特別区民税の減収(100人規模の区立保育所 109所分の年間運営費に相当)が大きな痛手になっていると訴えている。それなら、当該プロジェクトを活用すればよいのではないだろうか。
地域課題に直面している居住者ほど、課題解決に資する事業に共感しやすいはずだ。ならば、居住者の多い都市部ほど、潜在的支援者も多いはずだ。当プロジェクトの目的に「地域の外から資金を調達する」との文言があるが、居住する地方団体に対する寄附もふるさと納税制度の対象となる。
居住者への返礼品送付は、ふるさと納税の趣旨に反するとされているが、居住する地方団体に寄附することで、日常生活の利便性につながるならば、返礼品を求めない寄附者(居住者)も多いのではないだろうか。
ふるさと納税の意義の1つに、「自治体が国民に取り組みをアピールすることでふるさと納税を呼び掛け、自治体間の競争が進むこと。それは、選んでもらうに相応しい、地域のあり方をあらためて考えるきっかけへとつながります」とある。
この意義に照らせば、都市部の取るべき戦略は、地域で営業する輸入業者が取り扱うフランス産ワインを返礼品とし、非居住者から寄附を集めることではなく、地域課題の解決の道筋を示し、居住者から寄附を集めることではないだろうか。
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