「はなまるうどん」は「吉野家」を超えるかもしれない長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/4 ページ)

» 2018年02月01日 06時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

 吉野家ホールディングス傘下のうどんチェーン「はなまるうどん」の業績が絶好調だ。1月11日に発表した同社の第3四半期決算(10月〜12月)によれば、はなまるうどんの売上高は203億8300万円。前年同期比14.0%増と2桁に乗せる大幅増収を達成した。

 好調の要因は、店舗数の増加であり、同期間に34店増えて464店となった。また、消費者の健康志向を追い風に、食物繊維入りの麺が支持されている。顧客単価は450円前後と、ワンコインで食事ができる手軽さも魅力だ。一時期の低迷を乗り越えて、今では牛丼を凌ぐ、吉野家グループの成長エンジンになっている。

 営業利益は12億1400万円で、前年同期比50.0%増とこちらも大幅に増えている。ちなみに、吉野家は売上高735億5400円で前年同期比0.7%増、営業利益は31億6800万円で前年同期比9.2%増、店舗数は5店減って1198店。不採算店を閉めて増収増益になっているが、成長性では、はなまるうどんの勢いに及ばない。

 今回は、「丸亀製麺」の787店に次いで、うどん業界第2位につける、はなまるうどんが2年連続の赤字という苦境を克服して、再び成長軌道に乗った理由を探っていきたい。

photo 「温玉ぶっかけうどん」

讃岐うどんを万人に受け入れられる大チェーンに

 はなまるうどんの創業は2000年5月。香川県高松市のロードサイドにオープンした木太店が1号店である。創業者の前田英仁氏は、高松市に隣接する木田郡三木町の出身。アパレル企業のエイジェンスを当時高松市内で経営しており、その飲食部門として立ち上げた。

 1993年に刊行された『恐るべきさぬきうどん』という、香川県名産の讃岐うどん探訪記をきっかけに、当時は県外で讃岐うどんブームが起こっていた。大阪をはじめとする近畿圏、さらには首都圏からも、うどんを食べに来る人が引きも切らない状況であった。

 前田氏の非凡な点は、この状況を観察し、讃岐うどんこそ、セルフサービスで「早い、うまい、安い」といった、ファストフードに不可欠な3条件を備えていると気付いたことだ。

 香川県の繁盛店7店をリサーチした前田氏は、家業のような個人店でも、1日1000人以上が来客している実態をつかんだ。しかし、内装に無頓着なため、当時約102万人の県民のうち男性客しか来店していない問題点も抽出した。

 そこで、内装をポップで明るくカフェテリア風に改善すれば、「マクドナルド」のように万人に受け入れられる大チェーンを構築できると確信して「はなまるうどん」をスタートさせたのだ。01年11月に古書店を展開していた高松市の企業、フォー・ユーと共同出資ではなまるを設立し、分社化した。

 かけうどんの小サイズは当初180円で売っていたが、「100円でここまでやるかと驚きと感動を与えたい」との思いで3カ月後に100円に値下げすると、来客数が約3割増えた。現在は130円に上がっているが、それでも圧倒的に安い。

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