東京都の「選ばれし6路線」は実現するのか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)

» 2018年02月09日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

選ばれざる10路線

 残る10路線は東京都内で完結する。しかし基金の対象にならなった。その理由はいくつか考えられる。費用が膨大であること、計画自体が進んでいないこと、緊急度が低いことなどだろう。個別にみてみよう。

・常磐新線の延伸(約1400億円)

 古い呼称が残されているけれども、つくばエクスプレスである。国交省が監修する鉄道要覧では常磐新線のままだ。秋葉原が始発となっているつくばエクスプレスを、東京駅まで延伸する計画だ。もともと常磐新線は東京駅が起点だった。しかし、建設費を計算する際に、最も建設費のかかる東京〜秋葉原間を除外し、資金を経営安定のために留保した。東京都が音頭をとらなくても、通常の新線建設の枠組みで建設可能という判断があったと思われる。東京駅からさらに延伸するという構想も持ち上がり、計画が未確定でもある。

・都心部・臨海地域地下鉄構想の新設及び同構想と常磐新線延伸の一体整備(約9100億円)

 つくばエクスプレスを東京駅へ延伸し、さらにお台場の東京ビッグサイトへ延ばす計画。国交省のプロジェクト検討結果でも「検討熟度が低く構想段階」とされており、具体的な動きがない。構想を計画にするためには、この路線を望む自治体が、検討するための需要予測、建設費などのデータを用意する必要がある。

・都心直結線の新設(約4400億円)

 都営地下鉄浅草線の新線として発案された。京成電鉄押上駅と京急電鉄泉岳寺駅を結び、中間駅は東京駅とする構想だ。成田空港と羽田空港を結ぶ路線として話題になった。しかし、羽田空港の国際化、成田空港の国内線整備によって両空港相互の乗り継ぎ需要が見込めない状況になっている。そのため、東京駅から羽田空港、成田空港へのアクセス路線として再検討されている。しかし、他の空港アクセスも整備されている中で、大深度地下発着の路線について、施工方法、地上から駅までの所要時間などを考慮すると、費用対効果の課題は多い。

・京急空港線羽田空港国内線ターミナル駅引上線の新設(約260億円)

 京急電鉄の羽田空港国内線ターミナル駅に引き上げ線を設置し、折り返しを効率化して運行間隔を短縮。運行本数を増やす計画。増大した運行本数を受け止めるため、京急品川駅を改良して発着線路を増やす。京急品川駅の改良は、東京都と港区が別途策定する品川駅、田町新駅の都市計画に組み込まれている。羽田空港国内線ターミナル駅の引き上げ線設置については、受益者が京急電鉄1社になる。京急電鉄主導で実施してほしいというのが東京都の本音だと思われる。

・都心部・品川地下鉄構想の新設(約1600億円)

 東京メトロ南北線、都営地下鉄三田線の白金高輪駅と品川駅を結ぶ新線。思い付きレベルで、国交省のプロジェクト検討結果も検討熟度が低いと指摘している。独立した路線にするか、地下鉄路線のどちらかと直通するか、品川駅港南口方面への延伸もうわさになった。構想としても固まっていない印象だ。

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