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» 2018年03月09日 07時15分 公開

繁盛店から読み解くマーケティングトレンド:小売りの未来のカタチは「アマゾン・ゴー」だけではない (1/4)

AIを活用した最先端のコンビニ「アマゾン・ゴー」が話題です。今後このような無人店舗は当たり前の小売り業態となっているでしょう。しかし、もっと別の切り口が小売業の未来には必要だと思っています。

[岩崎剛幸,ITmedia]

 米国・シアトルにアマゾン・ドットコムが人工知能(AI)を活用した最先端のコンビニ「アマゾン・ゴー」をオープンして話題になりました。レジのない無人コンビニということが最大の売りです。

 確かに、人のいないコンビニはどんな店なのかはとても気になるところです。今後は日本のコンビニ大手も無人コンビニをオープンしていくと表明しています。無人店舗こそ未来の小売業の形とも言われています。しかしテクノロジーの進化とともに、無人店舗は10年後には当たり前の小売り業態となっているでしょう。私はもっと別の切り口が小売業の未来には必要だと思っています。

 今回はある企業の作った新業態の考え方を通じて、小売業の未来のカタチを考えてみます。

非日常価値が低下し、日常価値の向上を求める消費傾向

 今、東京・新宿駅周辺の百貨店や駅ビルがこぞって食品売り場を強化したリニューアルを実施しています。

 京王百貨店は11年ぶりの菓子・総菜売り場の大型改装。2018年3月と9月に順次改装を予定しています。小田急百貨店も2月に総菜売り場の改装。いずれも30〜40代の働く女性をメインターゲットにした食品売り場の改装です。

JR新宿駅に16年にオープンした「ニュウマン」 JR新宿駅に16年にオープンした「ニュウマン」

 これらの改装が、特に食品に集中している理由は、ファッション関係で売上げがとりづらくなってきたことと併せて、ルミネが16年に新規オープンした「NEWoMan(ニュウマン)」の影響が大きいと思われます。入居する100店舗のうち半分以上を飲食などの食系テナントが占めます。

 特にエキナカに出店する多くが食関連店舗であり、新宿駅で乗り換える女性顧客の帰りがけの買い物需要に対応して支持を集めています。わざわざ百貨店に行かなくても食品をエキナカで購入できます。ルミネはJRのスペースを活用しながらエキナカという最高立地で女性の消費を取り込んでいるのです。

 新宿の最大の魅力は、昼間人口、20代後半から40代前半の女性人口、そして乗降客数という3つの人口が多いことにあります。中でも働く女性人口比率が高まっていることは新宿の小売業に大きな影響を与えています。

 新宿区の人口ピラミッドを見ると、15〜64歳の生産年齢人口は23万4676人。3区分内での生産年齢人口比率は71.5%と非常に高くなっています。日本全体では62%程度で、生産年齢人口は現在も減少傾向にあるので、その差は歴然です。この生産年齢人口の中でも20代後半〜40代女性のシングル人口が多いのが新宿の特徴です(下図参照)。

新宿区の人口ピラミッド推移(出典:新宿区 新宿自治創造研究所資料より) 新宿区の人口ピラミッド推移(出典:新宿区 新宿自治創造研究所資料より)

 結果的に新宿地区内で消費する女性の嗜好もますます多様化してきています。消費動向に詳しい三浦展氏の「中高年シングルが日本を動かす」(朝日新書)には年齢別のシングル(おひとりさま)傾向が記されています。消費に敏感な34歳以下女性は、ファッションはバブル時代の半分程度の消費へと減少しているのに対して、食費は増加傾向にあり、特に、生鮮果物の消費が多く、(特に化粧品などでは)ナチュラル・オーガニック志向が強いと指摘しています。「非日常価値が低下し、日常価値の向上が求められている」(同著より)のが今の女性の価値観です。

 従って、ハレの場を着飾るファッション消費よりも、毎日の食生活の充実をしたい女性たちが都心を中心に増加し、これまで以上に食の重要性が増していると言えるのです。

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