行列はもういらない――苦境「クリスピー・クリーム」、新社長の改革3年連続で最終赤字(2/3 ページ)

» 2018年03月14日 17時54分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

優秀な人材が分散していた

 若月社長は苦戦の要因を「拡大路線を打ち出して地方の出店を強化した反動で、優秀な人材が地方に分散してしまい、収益源である首都圏に戦力がそろわない状況が続いていた」と分析する。

 接客方法と店舗レイアウトにも問題があり、「長蛇の列をさばくためのスピード重視の接客を参入当初から継続しており、1人1人に応じた接客を提供できていなかった。高級路線をうたっているにもかかわらず、店舗の内装はファストフード店に近く、所狭しと椅子やテーブルが並んでいる状態だった」と振り返る。

 こうした状況を改善するため、若月社長は出店戦略を「選択と集中」型に変更。18年度は関東、東海、関西エリアに絞って出店するほか、店舗デザインを地域に応じたものに変えていく。

photo 有楽町イトシア店の内部

 「スキルを持った人材を収益性の高いエリアに再配置し、売り上げの拡大を進める狙いだ。都市部の店舗はあえて座席数を削減し、個人がゆったりくつろげるレイアウトへと改装している。郊外の店舗はファミリー向けの内装に変え、子ども向けの設備やテーブル席を多く配置していく」

 試験的に座席を減らした都市部の店舗は、来店者増という結果が出ている。若月社長は「くつろげる環境を魅力に感じてもらった結果だ」と自信を見せる。

 新たな旗艦店となる2店でも、座席数は少なめに設定している。若月社長は「新宿サザンテラス店なき今、顧客に当社の世界観を訴求できる規模の店舗はこの2店しかないと考えて旗艦店に据えた。個人が過ごしやすい店舗運営を心掛け、ターゲットとする20〜30代のOLや買い物客に多く来店してほしい」と説明する。

チャネル開拓も進める

 ただ、出店戦略を変えることで、地方の顧客とのタッチポイントが減るリスクもある。これを考慮し、若月社長は店舗以外のチャネル開拓を進めている。

 「包装を工夫して長持ちさせた商品を他社の店舗で販売する取り組みを始めた。現在はANA FESTA、National Azabuの2社と組み、羽田空港内の売店や高級スーパーでドーナツを売っている。18年度はチャネル拡大を加速し、より多くのパートナー企業と提携したい」

photo 他社店舗で売っている包装済み商品

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