なぜ中日ドラゴンズは松坂大輔を「救世主」として獲得したのか赤坂8丁目発 スポーツ246(1/3 ページ)

» 2018年03月23日 08時00分 公開
[臼北信行ITmedia]

 球春到来の季節がやってきた。3月23日からは第90回選抜高校野球大会が甲子園で始まる。そして、その1週間後となる30日からプロ野球もセ・パ両リーグが同時に開幕。12球団の熱い戦いの幕が切って落とされるが、その前から早々と尾張名古屋の地でファンの期待と話題を一挙に独占している「元スーパースター投手」がいる。中日ドラゴンズの松坂大輔投手だ。

 メジャーリーグで8年間プレーした後、国内復帰を決意し、2014年12月に福岡ソフトバンクホークスへ入団した。3シーズン在籍したものの、右肩の故障などコンディション悪化に悩まされ続け、一軍登板は16年10月2日のシーズン最終戦(対東北楽天ゴールデンイーグルス)のわずか1試合のみ。しかも1イニングで被安打3、与四死球4、暴投1の計5失点(自責点は2)という散々の内容だった。

 3年12億円の超大型契約が満了となり、ホークス側は18年シーズンから支配下登録を外した上で育成選手契約かコーチ契約を結びながらリハビリを継続する「温情契約」を打診したものの松坂は固辞。ここから1月の入団テストを経て年俸1500万円(推定)プラス出来高払いの1年契約で中日・松坂が誕生したのはご存じの通りだ。

 ソフトバンクでロクに働かず最後は球団からの「温情契約」もソデにして現役にこだわるわがままを貫き、あっさりと福岡を去ってしまった。大金をがっぽりもらったまま“トンズラ”したかのような印象を世に与えたことで退団直後の松坂は激しいバッシングにさらされた。

 ところが今はそれも一段落して沈静化している。ここまで3月23日現在、オープン戦で2試合を投げて合計5イニング、1被本塁打を含む5安打5四死球3奪三振4失点、防御率7.20と成績は正直パッとしていない。それでも「松坂大輔」や「松坂」の文字がメディアで取り上げられるとまだまだ多くの人から注目され、いや応なしに話題の中心となる。この流れはまさに中日側の読み通りの展開だった。松坂獲得は緻密なまでに費用対効果の面も含めてリサーチした上で、球団の人気回復を是が非でも図りたい上層部からゴーサインが出された起死回生の策でもあったのである。

 実際、沖縄・北谷で2月に行われた春季キャンプでも応援タオルなどの松坂グッズが飛ぶように売れた。「例年の6倍の売り上げ」という報道もあったほど。キャンプ地でも松坂を一目見ようと県外からも多くの人が訪れた。

 松坂のオープン戦2度目の登板となった3月14日の古巣・埼玉西武ライオンズ戦では、本拠地ナゴヤドームに2万4417人が来場。昨今は人気低迷にあえぎ、閑古鳥が鳴いてばかりのナゴヤドームで、オープン戦の平日デーゲームにこれだけの人数を集められる投手は松坂を置いて他にいない。前回登板の3月4日・楽天戦は本拠地初登板と日曜デーゲームという背景が重なって3万人を超えるファンを集客。ドラゴンズの球団営業サイドが「腐っても松坂大輔」とそろって感涙にむせぶ思いであるのもうなずけるところだ。一軍最低保障額1500万円の超格安年俸で早い段階からこれだけの松坂効果が得られるとなれば、球団にとってこんなオイシイ話はない。

photo 松坂効果により、ナゴヤドームのオープン戦にたくさんのファンが訪れた
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