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» 2018年03月29日 06時45分 公開

補助金に頼らない:IT企業が続々参加 沖縄発オープンイノベーションが目指すもの (1/2)

ICT基盤技術の実用化や普及を目的に設立した沖縄オープンラボラトリ。ここでは多くの企業が「ボランティア精神」で参加しており、まさにオープンイノベーションな取り組みが日夜行われている。

[伏見学,ITmedia]

 会社の枠を飛び出し、多種多様な人材とコラボレーションすることによってビジネス変革などを起こそうとする「オープンイノベーション」が注目されている。

 例えば、トヨタ自動車は「TOYOTA NEXT」というプログラムの下、革新的なテクノロジーを持つ異業種の企業やベンチャー、研究機関などと組むことで、未来のモビリティ社会を創造しようとしている。背景にあるのは既存のビジネスモデルに対する危機感や、事業のさらなる成長に向けた貪欲な姿勢などだろう。

 ただ、オープンイノベーションは数年前から叫ばれているものの、トヨタのように具体的な実践に移している企業はまだ日本では少ないのが現状ではないだろうか。

 そうした中、幅広い英知を集めて日本のIT産業をアジア、そして世界へ広げていこうと、ユニークな活動をしているのが、一般社団法人の沖縄オープンラボラトリだ。沖縄オープンラボラトリは、次世代ICT基盤技術の実用化や普及を目的に2013年5月、沖縄県うるま市に設立。当初の参加企業はNEC、NTTコミュニケーションズ、イイガの3社だったが、現在は50社にまで拡大している。

IT技術者のオープンイノベーションが沖縄で IT技術者のオープンイノベーションが沖縄で

 主な活動内容は、SDN(Software Defined Network)をはじめ、クラウドコンピューティング技術などの普及に向けたネットワーク基盤研究、先行的なユースケースの研究、高度IT人材の育成などである。企業にとって沖縄オープンラボラトリに参加する魅力とは何だろうか。

 「各社ともラボに社員を派遣しているが、ラボから給料もらっているわけではない。テストベット(研究設備)の環境構築など、活動を支えている人たちはボランティアでかかわっている。ただ、彼らにとっては、他社のユニークなエンジニアとコラボレーションしたり、学生の人材育成に携われたりすることに喜びを感じて参加してくれているのだ。米国のオープンソースのコミュニティー活動と似ている」と沖縄オープンラボラトリの伊藤幸夫理事長は説明する。

 設立から3年間は県の事業として補助金が出ていたが、そもそも、それがあるから立ち上げたということではなかった。ネットワーク技術をはじめとするIT技術力の向上と、それに伴いアジアに向けて日本のIT産業をアピールするという目標を掲げていたため、当時から各社が費用持ち出しで参加していたという。「補助金を目当てにしたような会社も最初はいたが、すぐに抜けていった」と参加企業の1社であるオキットの土橋ひとし取締役は振り返る。

 沖縄オープンラボラトリの拠点は沖縄情報通信センターに構える。常駐のスタッフは10人ほどで、テレビ会議を利用した遠隔でのミーティングなども頻繁に行われている。若いスタッフとベテランが半々くらいだが、年齢やキャリアに関係なく、風通し良い“ワイガヤ”の雰囲気だという。

 同じIT業界なので、参加企業はビジネスシーンで競合になることもある。ただ、そうした壁を越えて、このコミュニティーの中では技術的な悩みなどをお互いが共有し、具体的な解決策を教え合うこともしばしば。一方で研究成果を出すために各社が切磋琢磨し、より優秀な社員を投入するなど、良い意味での緊張関係も生まれている。

 「普段はビジネスの取引関係などで話せないような会社が、共通のテーマで意見を言い合えるような場になっている。そうした議論の中で情熱を持った人が出てきて、人材育成のメンターを買って出たりする。企業や立場など関係なく、同じ場に集まってやり取りすると新しいイノベーションが起きるものだ」と伊藤理事長は手応えを感じている。

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