コラム
» 2018年04月25日 07時00分 公開

これからの経理のあり方:経理がAIに乗っ取られる、は本当か? (1/4)

AIの台頭によって失う仕事として、よく「経理」が挙げられる。しかし、長年経理の業務に携わってきた筆者は「そんなことはない」と言う。そのわけとは……?

[前田康二郎,ITmedia]

 「経理」といえば、普段は地味な仕事なのに、雑誌のAI(人工知能)特集で「なくなる仕事ランキング」というネガティブなテーマになるときだけ、必ず上位に食い込んできます。

 中には99.9%、AI等で代用されてしまう、という統計データもあります。私は実際にはこれはないと思います。なぜなら、経理職というのは、傍からみるよりも「揺らぎが大きい仕事」だからです。そのデータが加味されていないのではないかと思うのです。

 経理には「例外処理」というものが数多くあります。機械というものは、おしなべて例外処理が苦手です。だから現状も、これからも、例外処理に関しては人間が対応、サポートすることになるでしょうし、そのほうがコスト面でもペイすることが多いでしょう。

経理の仕事はいずれAIに取って代わられてしまうというが…… 経理の仕事はいずれAIに取って代わられてしまうというが……

 問題は、その例外の頻度がどれくらいなのか、ということです。この点を認識違いしている人が多いのです。経理には例外処理が「ほぼない」と思っている人が、経理はAIなどで簡単に代替できる、という誤解をしてしまっているようです。

 例外処理が年に1、2回といった頻度でしたらほぼ無人化できますが、月に1回、あるいは数日に1回、毎日となると、経理社員が5人いる職場であれば、5人から2人に減らせたとしても、誰かが例外処理の対応をしなければいけないので0人にはできません。1人でも可能ですが、内部統制、不正行為のけん制、属人的なリスクを考えると1人というのは不適切でしょう。

例外処理とは?

 では、その例外処理には具体的に何があるのでしょうか。主に2種類あります。1つは月次決算などに絡む振替処理など、日常的な業務から派生する例外処理です。例えば、月次決算を行っている会社は、そのルールに添って細かく正しい勘定科目を計上しなければいけませんので、按分計上、前受金、前渡金の振替処理などが業種によって発生します。それらは定型的な振替仕訳を人間がセッティングをして仕訳データを流し込む「半自動化」はできますが、全自動化、つまり無人化できているとは言えません。

 現状の技術では、例えば、契約書の画像を取りこむだけで、そこから文章の意味を読み込み、それに紐づく会計仕訳(期間按分、前受金、前渡金の判別など)を自動生成させて会計データに流し込むといったことはできません。そのレベルまでは簡単かつ正確に機械でやってもらえないと経理の無人化への道のりは遠いでしょう。

 一方で、フリーランスをはじめとする個人事業主など、月次決算する必要ない人は、それらに関する処理を気にする必要がありませんので、自動化に適合しやすい環境です。クラウド会計は税理士と連携しているところが多く、年に1回は、個人事業主も月次決算を行う会社のように厳密に会計期間を分ける仕訳処理が必要です。ただ、それ自体は税理士が代行処理すればいいので、個人事業主本人は気にする必要がありません。税理士にとっても、クライアントに領収書などを1年間丸抱えされるより、随時画像で領収書を送ってもらったほうが、繁忙期が分散され、均質になるので業務上も助かります。

 このような場合は税理士と顧客がWIN-WINの関係になるので、とても便利でしょう。一方で、月次決算を行っている会社は、月次決算の処理や最終チェックをしている人、契約書などから正しい会計期間などを判断して計上できる人などはこれまでと変わることなく仕事があります。

 かたや、例外処理ではない、領収書や請求書の通常仕訳処理、振込処理作業に従事している人は、これからも作業はあります。しかし、主にチェック作業が主体になり、作業全体の労働時間数は逓減していくことでしょうから、その空いた時間の分、新たに自分が生き残るための仕事のスキルを何か身に付けておかないと、仮に会社の経理が5人から3人に減った際に、最終的に選ばれた3人に自分の業務の引き継ぎをしなければならなくなる可能性はあります。

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