「物流や建設現場でこの製品を使えば、作業効率が1.5〜1.7倍も改善できます。人間のもつ能力をロボットが助けてあげることで、シニアや女性など性別や年齢にかかわらずに誰もが長期的に身体を壊さずに働くことができ、『働き方改革』にもつながる。2020年までには2000着を販売し、『着るロボット』を現場に定着させたいと考えています」
パナソニックが出資するロボットベンチャーATOUN(アトウン、本社・奈良市)の藤本弘道社長(47歳)は意気込む。ATOUNは、「着るロボット」とも言われる重労働の負担を軽くするパワードウェア(装着型ロボット)「モデルY」の販売を夏頃から開始する。パナソニック出身の藤本社長は15年前の創業時から製品化を進めてきた。
このパワードウェアは、体幹の動きをセンサーで検出し、モーターを回転させることで荷役作業などでの腰部への負担を軽減させる着用型のロボットだ。エントリーモデルとして、3年前の15年に初めてアシストスーツ「モデルA」を発売した。しかし、スーツの重さが7.4キロもあったため、レンタル会社は購入してくれたものの、270着ほどしか売れなかった。この経験を踏まえて、手のひらサイズのモーター制御基板を作るなどして部品を徹底的に軽量化、「モデルA」より40%軽くした4.4キロの「モデルY」の発売にこぎつけた。
従来型には「夏に着ると暑い」との意見もあった。そこで身体に接する面積を約50%減らしたり、ウェアと身体の間に隙間を空けて通気性を上げたりすることで、着用者が軽快に作業できるようになった。藤本社長は「大企業はもちろんですが中堅・中小企業にも使ってもらいたいので、価格は旧モデルのほぼ半額である60万〜70万円にまで抑えました。レンタルにすれば月額数万円で使えます」と話す。
「モデルY」は、「重量物を持ち上げる」「運ぶ」「降ろす」などの荷役動作に合った3つの動作モードを設定、それぞれの動作を補助してくれる。左右のモーターが個別に制御されているため、左右別々にアシストして作業を妨げることがない。筆者も装着して試してみたが、かがむ姿勢で荷物を持とうとすると、腰から背中にかけて持ち上げられる感じになり、荷物を楽に持てた。特に中腰姿勢になることが多い、物流や建設現場では腰への負担の軽減に役立ちそうだ。
すでに香港の大手建設会社の金門建築有限公司と基本合意書を交わし、今年2月から同社の現場で10台が試験導入されている。この結果を踏まえてさらに改良を加える方針だ。国内からも問い合わせが来ているそうで、ATOUNのパワードウェアの認知度を上げていきたい考えだ。
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