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» 2018年06月20日 06時30分 公開

小売・流通アナリストの視点:企業不祥事続発から、サラリーマン国家になった日本を考える (1/3)

大企業の不祥事が後を絶たない。金融業界に長く身を置いていた筆者としては、とりわけスルガ銀行の不正融資疑惑にはあきれてしまった。なぜこうした事態が起きてしまうのか――。

[中井彰人,ITmedia]

 最近の大企業の不祥事ニュースは、製造業の超有名企業が続けざまに出てくるため、「世界に冠たる日本ブランドの落日」的な報道が多い。近いところでは、神戸製鋼、スバル、日産自動車などだ。日本を代表する企業の謝罪会見が毎日のように報道されている様子には、何が起こっているのだろうと思わざるを得ない。

 そうした中でも、金融業界に長く身を置いていた筆者としては、スルガ銀行という中堅地銀の不正融資疑惑に関する報道には、あきれてしまった。あのバブル期を思い出させるような事件を起こす銀行がまだあったのか、という驚きである。

シェアハウスなどへの不正融資疑惑で揺れるスルガ銀行 シェアハウスなどへの不正融資疑惑で揺れるスルガ銀行

バブル期の銀行内部

 スルガ銀行の事件は、ざっくり言ってしまえば、シェアハウス向け投資をする個人に対するローン審査で、データを改ざんして融資を実行していた、それも組織として実施していたという、事実なら明らかな犯罪行為を銀行が行っていたという疑惑である。組織ぐるみかどうかは、これから判断が下るのであろうが、事実として認めていることだけでも、相当に悪質な話だ。

 改ざんという明らかな犯罪行為以外の面でも、シェアハウス向けという特定の投資資金に、数千億円もの資金を注ぎ込むのが異常行動であることは、誰もが感じていることだろう。ただ、バブル期には、銀行業界ではこんな話は至るところに転がっていたことを思い出した。

 バブル期にも、多くの銀行は賃貸不動産向けのローンで融資残高を競っていた。ただ、優良案件には限りがあるため、すぐに競争が激化して残高は伸びなくなる。そうしたとき、多くの銀行が行ったことは、屁理屈をつけて融資基準を緩め、それまでの基準では採択しない案件を拾うという方法であった。

 例えば、これまでの融資基準に達しない相手に対して、第三者保証(主にローン保証会社)をつけて、最終の回収懸念を薄めるという手法がある。これも本当の第三者やグループ会社では、返済能力に懸念がある人に保証ができるわけがない。そこで、最終的に何でもOKとするための、保証会社をデベロッパー自体に作ってもらい、案件としての体裁を整えることもあった。不動産物件を開発して、販売している企業の売り上げに直結するのだから、保証すると言うに決まっている。これらの融資は、不動産市況が悪くなると、ほとんどが共倒れして不良債権と化したのが過去の現実であり、まったくの屁理屈だったという話である。

 こうしたローンの残高競争をしていた時代は、銀行内部の雰囲気も正直、異常な感じがあったことを覚えている。若いころ、前述のローンについて、「たこが足を食っているようなもので、いつか破たんするのではないか」といった疑問を呈したところ、上司の中には、「下らないことを言わずに案件取ってこい」と罵倒する人間がいたことを今も忘れない。

 こうした“常識”は、組織としてのルールや教育の中には、当然明記されておらず、マニュアルにも全く書かれていない。ただ、成果のみを評価する人事を行っている場合、結果として、正しくないルール運用を行って成果を挙げた者が組織で生き残り、ルールを守る者の多くが不遇となる、ということも少なくなかったように思われる。そのような職場環境を社内の人間はすぐに感じ取るため、「組織ぐるみ」という定義には当てはまらないとしても、多数の社員が成果を最優先した行動をとるようになるだろう。

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