日本では「老害」なんて言葉がよく聞かれるが、ドイツと同じように企業の高齢化が進むことになる日本でも、ベテランまたは高齢の人たちに対する見方を変える必要があるだろう。若手と同じように新しい技術などを一からトレーニングすれば、彼らの長年の経験を最大限に生かすことができるという考え方にシフトすることも、これからの企業には必要なことかもしれない。
それを実践し始めているのが、メルセデス・ベンツということだろう。
同社によれば、「メルセデス・ベンツは年齢ではなく、個人に目を向けている!」という。さらに「世代の幅があることで、私たちは力がつく。それは自宅でも、社会でも、そして職場でも同じだ。私たちのイニシアチブは、世代間の議論やつながり、相互サポートを積極的に推進していくことだ」とも主張している。そう対外的に宣言することで、社会的にも「底上げ」を図ろうとする意識も感じられる。
英国の有名な「老年学者」に、オーブリー・デグレイ博士という人がいる。「老年学」とは、簡単に言うと、「老齢化」、つまり歳をとっていく現象、今ではエイジングなどと言うが(反対をアンチエイジングと言う)、そのエイジングを社会学的にも生物学的にも研究しようという学問だ。
デグレイ博士は、人間は近い将来、150歳まで生きることができるようになり、さらにその先には、1000歳まで生きられる人間も出てくると、いくつもの著作やさまざまなメディアで語っている。
寿命が延び、世界的に高齢化が進んでいる。これから私たちは「高齢化」というものをあらためて考え直す必要がある。メルセデス・ベンツのような試みが、そのきっかけになるかもしれない。日本でも高齢化への考え方を見直すような動きが出てくることを期待したい。
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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