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時代の変化から逃げてはいけない “元受付嬢”が受付の自動化に取り組む理由これからの人間の役割とは?(1/6 ページ)

» 2018年07月05日 07時00分 公開
[向晴香ITmedia]
「受付」という自分の仕事を機械に奪われるどころか、むしろ能動的に仕事の一部を機械に置き換えた橋本真里子さん 「受付」という自分の仕事を機械に奪われるどころか、むしろ能動的に仕事の一部を機械に置き換えた橋本真里子さん

 「人間と機械の競争」――世の中で騒がれるようになりすでに久しいですが、近年、テクノロジーの進化はますますその加速度を増しています。例えば、Googleの年次イベント「Google I/O」では、ユーザーの代わりにレストランの店員と電話でスムーズに会話し、予約を行う人工知能(AI)のデモに世界中が驚かされました。

 こうまで進化すると、いよいよ、「AIが人間の仕事を代替する社会の到来」を数年先に起こり得る未来としてリアルに想像する人も増えているのではないでしょうか。私たちにとって、仕事を選んだり、キャリアを設計したりすることはいっそう難しくなっていくのかもしれません。しかし……。

 「いつ訪れるかも分からない不確実な未来を案ずるより、今自分に何ができるのかを考えていたい」

 そう異を唱えるのは、11年間にわたり「受付嬢」として活躍した後、ITベンチャーのディライテッド株式会社を設立し、オフィスの受付業務を効率化するシステム「RECEPTIONIST」を開発した橋本真里子さんです。

 自分の仕事を機械に奪われるどころか、むしろ能動的に自分の仕事の一部を機械に置き換え、自動化してしまった橋本さん。そんな彼女のこれまでの歩みから、不確実な未来への不安に臆することなく、「AI時代に仕事を楽しみながら生き抜くためのマインドセット」を探ります――。

かけがえのない11年間の「受付嬢人生」

ディライテッド株式会社 代表取締役CEO 橋本真里子。2004年大学卒業後、上場企業5社に受付として勤務。受付での実務だけなく、受付チームの構築やメンバーのマネジメントにも従事。16年にディライテッド株式会社を設立し、現職に就任。翌2017年、これまでの自身の経験や知見を総動員し、iPad無人受付システム「RECEPTIONIST(レセプショニスト)」をリリース ディライテッド株式会社 代表取締役CEO 橋本真里子。2004年大学卒業後、上場企業5社に受付として勤務。受付での実務だけなく、受付チームの構築やメンバーのマネジメントにも従事。16年にディライテッド株式会社を設立し、現職に就任。翌2017年、これまでの自身の経験や知見を総動員し、iPad無人受付システム「RECEPTIONIST(レセプショニスト)」をリリース

――大学卒業後に「受付」という仕事を選んだのはなぜですか?

 大学生時代、元々「内定をもらうことがゴール」になっている就活の空気に抵抗感があり、自分はそうではなく、これまで培ってきたスキルや性格をすぐに生かし、今後仕事をしていく上で役立つスキルを身につけられる仕事に就きたいと思っていました。

 在学中はアパレル店員のアルバイトをしていたので、人と接する仕事ならできそうだな、と。それで、受付の仕事を検討し始めたんです。

 当時は就職氷河期でしたから、受付なら派遣社員で雇ってもらいやすいこと、将来、転職して他の職種になったとしても役立つビジネスマナーが身に付くことも魅力でしたね。

――実際に受付の仕事を始めてみていかがでしたか?

 最初のころはかなり大変でした。受付の仕事では、来客対応から給茶、清掃にいたるまで、日々の業務をいかに効率化するかが問われます。一気に押し寄せる来客を臨機応変に対応しなくてはなりません。

 また、受付は個人プレーではなく、実はチームプレー。メンバー同士が連携し、大人数の来客にも的確に対応しなければいけません。いかにして円滑に機能するよう動き、会社組織に貢献するか――試行錯誤の連続でした。

 一方で、日々できることが着実に増えていくのも受付の仕事の醍醐味。やりがいを感じながら働いていましたね。

――11年間にわたり受付嬢として活躍されました。その間、どのように立場や役割は変化していきましたか?

 受付はメンバーの入れ替わりが激しいんです。自分の担当業務を数カ月後に次の人に渡すことなんて日常茶飯事。新卒で入社した会社でも、半年後には新人が入ってきて、私はもう1つ上のサブリーダー的役割を担うようになりました。

 起業するまでに合計5社の受付で働きました。2社目以降は受付チームのリーダーに近いポジションで採用いただき、受付で実務をこなすだけでなく、チームビルディングからオペレーション設計まで幅広い業務を経験させてもらいましたね。

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