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ショボい水族館を“全国区”にした「女房役」を駆り立てる危機感ショボいけど、勝てます。 竹島水族館のアットホーム経営論(2/5 ページ)

» 2018年08月31日 08時00分 公開
[大宮冬洋ITmedia]

「学芸員は雑芸員」。水槽の修理も自分でできるようになれ

 東海大学は駿河湾というフィールドに恵まれているだけでない。海洋学部付属の水族館がある他、学芸員の資格を取得して全国の水族館に就職する卒業生も多く、そのネットワークをいつでも活用できる強みがあるのだ。戸舘さんは先輩からもらった「学芸員は雑芸員」という言葉を今も忘れていない。

 「魚の飼育と研究だけではダメなんです。事務作業から機械の修繕まで、水族館運営に必要なことは何でもできるようになれ、と教えてもらいました」

 逆に言えば、日々のどんな作業でも糧になる。この教えは、大学院を出て小さな水族館に就職をした戸舘さんを支え続けた。

 「就職先は、以前の竹島水族館以上にヤバいところでした。常勤のスタッフは新卒の僕を入れて2人のみ。もう1人は中途採用で水族館勤務の経験者だったのですが、仕事を何も教えてくれないのに突然怒り出したりする人です。頭に来たので毎日2時間ぐらい早く出勤をして、全ての作業を僕が終えるようにしました」

 戸舘さんの立場は契約社員。月収は17万円ほどだった。当時、「高学歴フリーター」や「ワーキングプア」という言葉が聞かれるようになり、戸舘さんは親に電話して「オレは社会問題らしいよ」と報告。爆笑してもらったという。明るい家族である。

 「他の水族館からも引き合いはありましたが、現場で勉強して実力をつけてからでないと迷惑を掛けてしまいます。全てが勉強の毎日だったので、サービス残業をしていた意識はありません。水槽や配管を直すときは、休日出勤をして早朝から深夜まで業者さんの手伝いをさせてもらったこともあります。そのおかげで、今では設備が壊れたら原因を調べられるし、ある程度までは自分で直せるようになりました」

phot 金魚は副館長の戸舘さんが自ら担当。「原種展示が水族館の不文律ですが、うちは無視して改良品種である金魚も飼育・展示しています」

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