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ITエンジニアからの転身 小さな漁港に大きな変化を生んだ「漁業女子」三重・尾鷲で定置網漁(5/5 ページ)

» 2018年09月07日 06時30分 公開
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 ある日、田中さんはウエットスーツに身を包み、海の中に入って定置網の状態を確認していた。自分の目で確かめながら、もっと漁獲量が安定するよう方法を模索していた。さらに別の日には、地元のお父さん、お母さんたちと一緒に須賀利で再びアサリが捕れるようにする実験も行っていた。単に魚を取って東京に送るだけではなく、地元と一体化して、活性化させていくことを大事にしているのだ。

 漁船で漁をする以上、燃料や氷などは市場から購入するなど、市場との関係性も欠かせない。地域の皆さんと手を組み、相互扶助の中に参加しながらもITを駆使して、効率化できるところは徹底して効率化していく。

 8月末の時点でまだゲイトの漁業事業は市場に卸す単体の売り上げが0円だという。加えて、台風が続いた時期には、漁に出ることすらもできなかったり、船や網がダメージを受けてしまったりと、自然を相手にする一次産業ならではの大変さをまさに体験しているところだ。

 「漁をして、それを東京の居酒屋で提供して、売り上げを地元に還元していき海を守る。そんなサステナブル(持続可能性)な仕組みを作っていきたい。そのためにも今は、須賀利の歴史や食文化を教えつつ仕事を手伝ってくれるお父さん、お母さんに楽しんでもらうことを考えるのが今や私の趣味になっていますね。須賀利弁はまだまだですが(笑)」

 インドネシアと須賀利を飛び回っている田中さん。一次産業を営んでいく上で大切なのはともに活動する仲間たちと地域の人たちだと語る。ゲイトが考えるこれからの飲食店と一次産業の形が、田中さんによってデザインされはじめているようだ。

著者プロフィール

コヤマタカヒロ

フリージャーナリスト

最新のデジタルガジェットから家電製品までを消費者視点でレビュー、解説する活動を中心に展開しているフリーライター。様々な媒体にて連載多数。また、ベンチャー企業の取材も積極的に取り組むほか、執筆活動以外に企業のコンサルティングやアドバイザーも務める。


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