ECから撤退して店舗を強化するドンキの狙い小売・流通アナリストの視点(1/4 ページ)

» 2018年11月20日 06時30分 公開
[中井彰人ITmedia]

 10月11日、総合スーパーのユニーがドンキホーテホールディングス(HD)の完全子会社になることが発表された。既にユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)とドンキホーテHDは資本提携しており、時間の問題だったのであろうが、想像以上に速い展開が周囲を驚かせた。

 ドンキホーテHDがユニー・ファミリーマートHDの20%出資受入れという交換条件を提示したことで、ユニー・ファミリーマートHDと、その親会社である伊藤忠商事にも十分に収益貢献する案件となり、一気に進展したとみられるが、さすが業界の風雲児ドンキホーテのスピード感は大したものだ。

ドンキホーテHDがユニーと共同開発したMEGAドン・キホーテUNY大口店 ドンキホーテHDがユニーと共同開発したMEGAドン・キホーテUNY大口店

 ドンキホーテはこれにより、総合小売業としてイトーヨーカ堂を抜き去り、イオンリテールに次ぐ存在にのし上がることになった。小売グループとしても、ユニー・ファミリーマートHDとの単純合計で売上高4兆7000億円という巨大流通連合で業界の覇権争いに本格的な名乗りを上げた。

 ドンキホーテによるユニー買収のニュースが出た翌日には、イオンと四国の総合スーパー、フジの資本業務提携が発表された。フジは、本拠地である愛媛県を中心に、中四国に100店舗弱展開する地方総合スーパーだ。売り上げ規模は3200億円弱ながら四国では高いシェアを持っている老舗スーパーである。

 四国の流通環境は、本連載「瀬戸大橋30周年、四国は本州スーパーの草刈り場に」でも触れた通り、最大手イオングループや、中四国・九州でイオンとガチンコ勝負を繰り広げるイズミ(地域では、ゆめタウンの看板で有名。関連記事:「イオンもライバル視 知る人ぞ知る快進撃のゆめタウン」)、成長株の食品スーパー、ハローズなどの本州スーパーが、本四三橋を渡って進出し、草刈り場となっている状況にある。

 そうした状況下で、2018年4月には、ライバル、イズミがセブン&アイHDとの業務提携を発表し、資本関係はないものの、事実上の対イオン同盟を締結し、流通再編における旗幟を鮮明にしたことが、フジを決断させたのであろう。そして、この日をもって、総合スーパーのシェアは、イオン、セブン&アイ、ドンキホーテ+ユニーファミマの三陣営によって、事実上3分されるようになったのである。

西友の行方は?

 こうした業界再編によって、三陣営以外の主要企業は西友を残すのみとなっている。ウォルマートの西友売却、日本撤退というニュースを同社が否定して以降、西友の動向についてはあまり表面には出てきていないが、水面下での売却交渉が難航するのも分かるような気がする。

 イオン、セブン&アイの二大流通グループといえども、総合スーパー業態の業績は決して順調とはいえず、残存者となり得たのもグループ総合力の支えあっての話であることは、明らかだ。地方で地域一番のモールの集約力に支えられたイオンリテール、首都圏駅前立地に守られたイトーヨーカ堂も、総合スーパーという業態の活路を見出してはいないように見える。

 両陣営が、西友を丸ごと引き受けるとは考え難く、交渉相手はおのずと絞られてしまう。ドンキホーテか、切り売りを前提としたファンドへの一次売却か、という選択肢だとすれば、調整には相当の時間を要するだろう。

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