しょせんは付け焼き刃でしかない。そもそも技術がない上に、高電圧を扱う免許を持った整備士が足りず、サービス網での整備もおぼつかない。そこはトヨタとは違う。トヨタは95年以来、着々とハイブリッドマーケットを育て、世界各国で1000万台以上を販売、あらゆる国々の過酷な状況下で実際にユーザーが使い、それを支えるサービス技術を構築してきた。そのビジネススキルのリアルさは伊達ではない。
ハイブリッドとEVは別物だとする意見も散見するが、どちらもモーター、インバーター、バッテリーという3つの要素が構成要因である点では完全に同じだ。プリウスPHVはEVモードでの航続距離は60キロに達している。つまりハイブリッド車からエンジンを下ろし、バッテリー容量を上げればEVは簡単にできる。
では、なぜトヨタがEVをやらないかといえば、高コストな上に台数がはけないというのが第一の原因だ。要するに買う人が少ない。もし大手メディアがいうように市場がEVを求めているにもかかわらず、メーカーがサボタージュして生産台数が足りないのだとしたら、長い納車待ちが発生するはずだ。だがそんな話は聞かない。つまりEVは残念ながら製品として売れないということになる。
第二の原因は本格的なEVシフトに応えられるだけのバッテリーを生産できるサプライヤーがまだ世界のどこにもないからだ。それについてトヨタは17年秋にパナソニックと提携して30年までのバッテリー生産量を確約させた。然るのちに、30年にEVと燃料電池車(つまり内燃機関を持たないクルマ)の総計100万台を目指すと発表した。
欧州のメーカーは電動化だのEVだのと威勢の良い発表を続けるが、具体的にバッテリー供給のめどが立っているとは言い難い。この点で最も進んでいるフォルクスワーゲンですら、中国政府から「中国でクルマを売りたいのならば、バッテリーセルは中国製を採用すること」とゴリ押しされて、中国製のバッテリーを採用することになっている。しかしながら、先に同じ条件を飲んだ米GMのEV『ボルト』は、社内の性能・安全基準を満たすバッテリーが調達できず、開発の無期限延期に追い込まれている。同じ轍(てつ)を踏まない保証はない。
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