累計7600万本以上の売り上げを誇る国民的ロールプレイングゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズ。このうち、「ドラクエX」と「ドラクエXI」の2作続けてプロデューサーを務めたのが、スクウェア・エニックス取締役の齊藤陽介さん(48)だ。「ドラクエ」以外にも、新タイトルの「ニーアオートマタ」で350万本以上の売り上げを達成し、日本を代表するゲームプロデューサーの一人だといえる。
そんな齊藤さんだが、2018年8月に「ドラクエX」のプロデューサーを引退した(前編記事「ドラクエ」前プロデューサーが考える組織論――切り開いた道は後進に譲り自らは荒野を歩くを参照)。現在は11人の3Dアイドルユニット「GEMS COMPANY」のプロデューサーを手掛けている。Vチューバーとは、ユーチューバーを3Dなどの架空のキャラクターが演じるもので、2018年のネット流行語大賞にも選ばれた。GEMS COMPANYはVチューバーのアイドルとしても注目されている。
なぜ、齊藤さんは「ドラクエ」からアイドルプロデューサーに転じたのだろうか。齊藤さんの仕事哲学に迫る。
――齊藤さんは、18年8月に6年間続けられた「ドラクエX」の初代プロデューサーを引退し、現在は「Vチューバー」とも呼ばれる3Dのアイドルユニット「GEMS COMPANY」のプロデュースをされています。会社としてもあまり例がない試みだと思いますが、どんな経緯で取り組むことになったのでしょうか。
最初のきっかけは、14年10月にニューヨークで開かれた初音ミクのライブ「HATSUNE MIKU EXPO 2014 IN NEW YORK」の映像を見たことでした。もちろん初音ミクという実在の歌手がいるわけではないので、ステージの上に3Dの「彼女」がスクリーンに映されて踊っているんですね。観客もサイリウムを振ってとても盛り上がっていました。これを見たとき、雷が落ちたような衝撃を覚えたのです。
ただ、当時はまだ、細部まで含めてモーションをキャプチャーして3DCGのキャラクターをリアルタイムに動すというのは簡単ではありませんでした。だからこの3Dの初音ミクは、事前に用意されていたものだったわけです。しかしあれからモーションキャプチャー技術が進歩して、2年ほど前から3DCGのキャラクターを比較的安価にリアルタイムで動かせるようになってきました。そこで、あの初音ミクの感動をリアルタイムで実現できるのではないかと思い、面白そうだから3Dのアイドルをやってみようという話を会社に提案してみたわけです。
――「GEMS COMPANY」には「ドラクエXI」の3Dスタッフがかかわっているようですね。
その話が持ち上がったときは、ちょうど昨年7月に発売された「ドラクエXI」の完成が見えてきたタイミングだったんですね。そこで「ドラクエXI」の開発の手が空いたので、企画が本格的に始動した形です。「GEMS COMPANY」の映像やモーションキャプチャー面はプレイステーション4版「ドラクエXI」のCGやグラフィックを手掛けた株式会社イルカ( 東京都新宿区)さんにお願いしています。
――Vチューバーを見渡すと、最近では「キズナアイ」がNHKに出演するなど、少しずつ一般的になっていますね。
世の中面白いもので、私と同じようなことを考える人がいるんだなと思いましたね。会社の中で「GEMS COMPANY」の準備はずっと進めていたのですが、 ちょうど17年12月ころに、Vチューバーが話題になり、盛り上がり始めました。これを見てようやく時代も追い付いてきたなと思い、新年度の18年4月からスタートしようという話になりました。
それで4月から11人のアイドルたちが徐々にYouTube上で活動を始めていった形です。ちなみによく言われるのですが、昨年末からVチューバーが盛り上がってきたから、われわれも慌てて準備したわけではありません。その動き方だと全く間に合ってなかったでしょうね。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング