人々が互いに監視しあい評価しあう社会では、働き方や消費行動はどのように変わるのだろうか。また、人間の意思決定をAI(人工知能)はどこまで肩代わりするのか。AIによって選択させられる人間は幸福なのか。社会学者の古市憲寿氏と元2ちゃんねる管理人のひろゆき氏に、AI時代の人間像について語ってもらった。
→後編、本記事
――中国では監視社会化が進んでいます。監視社会になると働き方はどう変わるでしょうか?
ひろゆき: いまって監視社会化が進んでいることもあって、まともな人が増えている印象があります。迷惑をかけるのが当たり前でしょうという価値観で生きてきた僕のような人間は減っていくでしょうね。
古市: 最近、世界のどこを観光しても愛想のいい人が多いと感じます。トリップアドバイザーやUberでは、ホテルもレストランも運転手もすべて後から口コミで評価を書かれてしまう。だから、表面上はまともに働かざるを得なくなっているんでしょうね。
ひろゆき: 若い人も良い子だらけ。LINEでみんなつながっていて、ヘンなことをやらかすとすぐにうわさとして流れてしまうからね。
古市: 監視社会は人を「道徳的」にしていきますよね。
ひろゆき: その行きつく先は、中国みたいな社会ですよ。いたるところに監視カメラが張り巡らされて、悪いことをしたらどんどん捕まる。日常の行動がすべてスコア化されて、まともに生活していないと点数が低くなるから、信用のネットワークから弾き出される。こういう流れは止められないと思います。僕のようないい加減なタイプは、今後、けっこうつらくなりますよ。
古市: EUなんかでは、そういう流れをさすがにまずいと思っているわけですよね。
ひろゆき: 個人データの保護に関する取り組みは進んでいる気がします。ただEUの場合、各国が主権を失い、EUの委員会にいるエリートたちが主導権を握って物事を決めるようになってきている。例えば、イタリアはベーシックインカム的な政策をやろうとして、たいへんな赤字予算を立てたけれど、それを承認するのはEUの欧州委員会なので、ゴーサインが出ない。つまり、イタリア人が選んだ政治家がこうしたいと言っても、法律上、EUの委員会は拒絶できることになっているんです。そうすると、EUでも頭の良いエリートが、ヘンな人間が出ないような統治をしたがるから、結局、監視社会の方向に行かざるを得ないという気がしますけど。
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