マイナンバーを嫌ってTポイントを喜ぶ、日本人が気付いていない思い込み古市憲寿VS. ひろゆき(後編)(2/4 ページ)

» 2019年04月15日 07時30分 公開
[斎藤哲也ITmedia]

米国よりも中国に近い日本

小説『平成くん、さようなら』(古市憲寿氏/文藝春秋)

古市: 日本はどうでしょう? 中国みたいになっていくんですかね。

ひろゆき: なるんじゃないですか。根っこのところでは、儒教的な中国の価値観を持っている人が日本には多いし。中国よりも米国のほうが日本に近いと誤解をしている人もけっこういるけど、現実には、考え方も見た目も中国にめちゃめちゃ近い。いまは反日やビジネスのやりづらさがあるから、中国的になることに抵抗はあるものの、それがなくなれば一気に中国シフトが進んでいくかもしれない。ただ、日本人って監視を始めますよというと、無駄に嫌がるところもありますね。

古市: マイナンバーカードは中々普及しないですよね。そもそも制度自体を嫌がっている人も多い。Tポイントカードなどは、ポイントが増えると言われると、みんな喜んで出すのに。

ひろゆき: 冷静に考えて判断しているんじゃないんだよね。これには反対しないといけないという空気に従っているだけで、頭使って考えているわけじゃない。

古市: 入国審査も最近、顔認証を導入したけれど、あれもデータをためないで毎回消しているっていいますもんね。

ひろゆき: みんながエスカレーターの左側に並んで、右側が空いたまま混雑している駅ってありますよね。あれ、全員頭悪いですよ。僕はそうなったときに必ず右側に乗って歩かないんです。エスカレーターの右側は歩くものだってみんな思い込んでいるんですけど、本来のJRの規則上は、歩いてはいけないことになっている。だから僕が正しいし、文句言われる筋合いはないんですね。バカな人のおかげで簡単にエスカレーターに乗れるから僕は楽ですけど。

 そうやって思い込みでみんな行動しているから、Tポイントカードはいいけど、マイナンバーは嫌だっていうことになるんでしょうね。

――人間の意思決定は非合理だから、AIに任せたほうがいいという議論も出ています。

古市: 大事な意思決定を人間が手放すことはないと思います。合理的に考えたら、無駄なことはたくさんあるわけじゃないですか。でも無駄かどうかはつまるところ価値観のぶつかり合いでもある。一分一秒でも長く生きたいのか、苦痛なく人生を終えることが大切なのか。そういった問題はAIには決められないし、何かの条件をインプットして決めてもらっても、人々が納得するかはわからない。技術的にできることと、社会的にできることは違うんだと思います。

社会学者の古市憲寿氏(撮影:稲垣純也)

ひろゆき: 合理的な答えが出ていないことが問題じゃなくて、合理的な答えはもう出ているのに、誰がどう選ぶのかというところでずっと間違えているんですよ。だからAIの問題でもない。

 合理的な方向に進むためには、合理的な答えとその選択という2つの要素が必要で、合理的な答えはすでにある。それはAIだろうと人間だろうと出せるんです。でも、その合理的な答えを人間が選ばないところが大きな問題なんですね。

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