何分後に雨が降る? 「ハイパー天気予報」が災害大国・日本を救うかもしれない世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)

» 2019年05月09日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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ハイパー天気予報がビジネスを変える

 また、クライマセルによる「ハイパー天気予報」が実現することで私たちが受ける恩恵は、実のところ災害対策だけではない。ビジネスをも大きく変えると見られている。

 世界で現存する産業のうち3分の1が、天候に左右される仕事だといわれている。また、天候の変動によって年間GDPに2兆ドル以上の影響を与えているという。

 例えば、航空会社などは最も分かりやすい。正確な天気予報が出れば、運行状況への的確な決定ができるため、数百万ドルという損失を出さなくて済むと見られている。そのため、すでにいくつもの米航空会社がクライマセルのサービスを利用している。

photo すでにいくつもの米航空会社がサービスを利用している(出典:ClimaCell

 航空会社以外では、建設会社や保険会社のほか、電力など公共サービスも同社のサービスを利用している。現時点で、北米や欧州、インドで導入が始まっているという。近い将来には、個人もアプリで利用できるようになり、そうなれば、今いる場所で「○時○分○秒」から雨が降り始める、といった予測も実現されるだろう。

 たかが天気予報という人もいるかもしれないが、実際には命やビジネスに関わる重要な情報なのである。

 特に災害の多い国である日本では、そうした情報を予測する能力が、国民の生命と財産を守るために不可欠だといえる。令和の時代に直面するであろう大地震への対策だけでなく、水害への警戒は必要となる。日本企業は、投資に乗り出したソフトバンクを見習って、こうした新興の「インフラ」テクノロジーに投資すべきではないだろうか。さもないと、いつまでたっても私たちは自然災害に負け続けるだけである。令和時代にはぜひとも災害対策でブレークスルーを見たいものだ。

 今後のクライマセルの動向にも注目したい。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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