現在、天気予報は国が打ち上げている気象衛星や気象レーダーのほか、全国約1300カ所に設置されたアメダス観測所などのデータをもとに予測が行われている。だがクライマセルでは新しいアプローチを行う。エルカベツ氏は、「衛星などの従来の天気センサーからのデータに加えて、航空機、携帯電話の電波塔、コネクテッドカー(インターネットに接続された自動車)など何億もの“仮想”センサーからのデータを収集します。そして、軍事目的で使えるほど優れたAIのアルゴリズムを誇る私たちのシステムで解析し、非常に正確で詳細、カスタマイズ可能な天気情報を提供できるのです」と説明する。
航空機が天気予報のためのデータを拾うのは今も行われているので意外ではないが、「携帯電話の送電塔」「コネクテッドカー」といった“仮想”センサー、といわれてもピンとこないかもしれない。
エルカベツ氏によれば、「携帯電話などで使われる無線通信の電波塔は私たちの周りの至る所にある。天気予報の専門家でなければ考えたこともないでしょうが、通信電波というのは天気予測に活用できます。通信エンジニアの人なら、『レイン・フェイド』に悩まされたことがあるでしょう。これはひどい降雨の際には電波の信号が遅くなる現象のことです。マイクロ信号波のエネルギーは水分に吸収され、拡散されてしまう。つまり、降雨の際には、信号の強さにわずかな変化が見られ、雨がひどい状況では、完全に信号が届かなくなってしまいます。かなりの豪雨の際に衛星テレビが見られなくなるのを経験したことがあると思いますが、まさにそれです。これは雨だけでなく、空気中にあるどんな水分にでも起きる。雪や湿気ですらそうで、それらは全てしかるべき方法で識別することもできるのです」
簡単にいえば、信号の強弱で空気中の水分を割り出して天気状況を調べることが可能になる、ということだ。時間でその推移を見たり、周辺の電波機器とデータを比べたりすれば、天気の予測などもできるようになるらしい。
さらには、コネクテッドカーの情報(ワイパーのオン・オフや強弱の状況)も使えるし、監視カメラを見れば天気の情報も得られる。スマートフォンの電波などの強弱も生かせるという。
言うまでもなく、こうした機器は、私たちの周りの至る所に存在しているため、そこからデータを集めることで非常にピンポイントな天気予測ができるようになる。これにより、私たちのすぐ周辺で起きる豪雨や台風など天候による水害のリスクなども細かく予測でき、対策を実施することが可能になるというのだ。
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