クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ヴィッツ改めヤリスが登場すると、世界が変わるかもしれない話池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)

» 2019年10月21日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

日本車の革命

 そしてそのTNGAの最後のひと駒がGA-Bプラットフォームだ。今回、ヴィッツの後継車となるヤリスに導入される。ヤリスが位置するBセグメントは、極めて重要な商品群である。単純にポピュラーというだけでなく、営業車やレンタカーなどのニーズも含めて、多くのビジネスユースに用いられる。旧来のヴィッツのひどいペダルオフセットや、シートの不出来などが嫌でたまらなかったとしても、会社にあてがわれたが最後それに我慢して乗るしかなかった。つまりBセグメントのレベルアップは日本の労働環境の改善にすらつながる大きな問題だ。

 先日発売されたカローラ(セダン)とカローラツーリング(ワゴン)は、相当に素晴らしい出来だった(19年10月の記事参照)。荒れた路面で、タイヤが発生するノイズを床板の共振が拡大してしまってノイズが大きいという欠点のみは指摘せざるをえないが、それを除けば、世界の新たなスタンダードとなる出来であり、おそらくは世界の自動車メーカーに大きな影響を与えるだろう。

ヤリスのインパネ

 「トヨタのクルマが曲がりたがる」「わくわくする」。それはかつての「萌え」ないトヨタから考えると驚きである。曲がって楽しいトヨタ。そしてちゃんと真っ直ぐ走るトヨタ。この真っ直ぐ走るの方はカローラ・スポーツ(ハッチバック)のデビュー時にはまだ完成していなかったが、1年遅れで改善が成された。

 そういう完成度を持ちながら、筆者が山道を含む約700キロを走破した平均燃費は23.5キロ/リッターだった。ただし筆者の運転は極めておとなしいので、誰でもこの数字が出るとは思えないことは記しておく。

 トヨタが良くなれば世界のクルマが良くなる。トヨタが変わることはスタンダードが更新されることだ。だからトヨタは範となるクルマを作らねばならない。そういう中で満を持してのBセグメント投入なのだ。

 もちろん最終的には乗ってみないと分からない。ただ流石にここまで来ると、全くダメだったということは起きないと思う。まさに信頼とは実績が作るものだ。

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