ハイエンドな価格帯でありながらWAGYUMAFIAが成功した理由の1つは、外国人をターゲットにしたことにある。しかしそれ以上に重要な理由は、最高級和牛の専門店や和牛カツサンドスタンドという従来は存在しなかった需要を掘り起こし「新たなマーケット」を作ったことにある。浜田は、日本の高価格帯のレストランはまだまだブルーオーシャンだと指摘する。
「ロンドンのメイフェアにある高級レストランの中には、1店舗で年間80億円売り上げる店もあります。世界にはハイエンドな店がたくさんある一方、日本にはまだほとんどありません。WAGYUMAFIAはそのマーケットを作ることができたと思っています。
この戦略は、僕が以前に映画を買い付けていたときと同じです。新しいジャンルの映画は、新しいマーケットを作らないと既存マーケットでのユーザーセグメントでは全く受け入れられない。新しいマーケットで新しいユーザー像をイメージしていかないとダメなんです。
カツサンドも最初は1000円と2万円のバリエーションから始めました。現在は5000円から始まり、ドライエイジの神戸牛カツサンドが3万5000円。最も高い兵庫県畜産共進会で最優秀賞を受賞した和牛のカツサンドは5万円です。それでも買ってくれる人がいます。多いときは1日で130万円を売り上げる店舗に成長し、外国人比率は95%を占めています。
例えば僕らがパリに行って世界一おいしいステーキバゲットサンドウィッチが200ユーロ(約2万4000円)だとしても絶対に食べたいと思います。ただランチとディナーはだいたい予約が入っている。そうなるとそのはざまの30分間で最高の和牛サンドを食べたいというニーズは必ずあるはず」
ハイエンドの市場を作り、マーケットを広げることは、生産者から安定して買い付けができることにもつながる。そのためにも、輸出だけでなく、今後はWAGYUMAFIAとYAKINIKUMAFIA、MASHI NO MASHIで店舗を拡大する考えだ。
「これはだいたいの数字ですが、日本には和牛やホルスタインなど、全て合わせて約300万頭の牛がいます。このうちの10%にあたる30万頭が和牛です。さらにそのうちの95%が黒毛和牛で、その中でも10%の3万頭くらいが特に希少性の高い『ブランド牛』と呼ばれる牛です。
僕はブランド牛の10%に当たる、3000頭を扱いたいと思っています。ブランドの頂点を構成する和牛の価格はもっと上げるべきで、その価値が分かる海外のパートナーと、ユーザーを作っていかなければいけない。WAGYUMAFIAの役割は、そのための舞台装置です。
最も高価な和牛を海外に輸出できれば、和牛の関連商品も一緒に売れていきます。WAGYUMAFIAで使っている調味料や米などの食材をはじめ、海外の店舗で使う特注の器も、僕たちがいいものを買って海外に広めたい。WAGYUMAFIAを誰にもまねできないものにすることも戦略の1つです。
新しいマーケットの創造なら、誰にも負けない自信があります。僕たちと一緒に世界で勝負したいという面白い人がいたら、ぜひ一緒にやってみたいですね」
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