そもそも、デジタル人民元とはどういうものなのか。基本的には仮想通貨のようなデジタル化された通貨のことだ。中央銀行である中国人民銀行は、14年の段階で、独自のデジタル通貨の発行を見据えて調査チームを立ち上げている。
そして今では、デジタル人民元が20年には発行されるのではないかと言われるまでになっている。1月25日の旧正月に間に合わせるという話があったくらいだ。現時点でもその詳細は公開されていないが、デジタル人民元は仮想通貨で使われるブロックチェーン(分散型台帳)技術を導入するようだ。通貨の売買で値段が不安定に変動する仮想通貨と違い、デジタル人民元は、人民元に連動させることで価格の安定したデジタル通貨として使えるようにする。簡単に言えば、人民元がそのままの価値で「データ」に交換でき、ネットなどで現金と同じように扱える。
今のところ世界にはデジタル通貨を発行している国は存在しないため、デジタル人民元が実現すると、世界初の「国家が発行するデジタル通貨」ということになる。
ただ中国ではすでにネット決済などキャッシュレス化がかなり進んでいる。特にアリペイやウィーチャットペイといったモバイル決済が恐ろしく普及しており、19年は利用者数が6億人を超え、利用額は40兆ドルを超えると言われている。都市部では、98%以上がモバイル決済を使っているらしい。これらの決済では、単なる買い物だけでなく、公共料金の支払いからローンまで利用できるようになっており、人々の暮らしになくてはならないものになりつつある。
これは中国当局にとってもありがたいことで、モバイル決済の普及により、これまで問題になってきた偽札への対策になるし、政府はデジタルでひもづけられたさまざまな取引情報を吸い上げることで人々のカネの流れも徹底管理できるようにもなる。
しかしそれほど普及した決済システムがあるのに、なぜデジタル人民元を発行しようとしているのか。これだけだと、決済手段が1つ増えるだけにすぎないと思えるが、実はそこには中国政府による“壮大な野望”があると見られている。
ずばり、世界における、ドル覇権の崩壊と人民元の台頭である。
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