2020年に発行か? 中国が「デジタル人民元」に抱く、危険な野望世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

» 2020年01月09日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

デジタル人民元が広まると、何が起きるのか

 デジタル人民元は、中国国内で銀行口座を持つ必要があるドメスティックなモバイル決済と違い、基本的には誰でも持つことができるようになる。国境も関係ない。

 実は今、中国を訪れる外国人旅行者が、都市部を中心に、モバイル決済を使えず買い物ができないという現象が起きているという。銀行口座を作れない国外からの旅行者はモバイル決済も基本的には利用できないからだ。そこで外国人にデジタル人民元を持ってもらうことで、インバウンドの消費も取りこぼさずに済む。

 この話のように、デジタル人民元を発行する裏には「外国」がある。旅行者のみならず、外国企業との取引や、国家間のやりとりなどにもデジタル人民元を使ってもらいたいのだ。中国政府が推し進めている現代版のシルクロード経済圏構想である「一帯一路」で協力する数多くの国々とも、デジタル人民元でやりとりするよう促すこともできるだろう。中国がインフラ設備で投資をしている国家などに対しても、同様だ。

デジタル人民元が広まると、米国の法定通貨であるドルの牙城が崩れる?(写真提供:ゲッティイメージズ)

 このように、デジタル人民元が世界で広く使われ、国際化していくと、何が起きるのか。

 世界で最も普及している基軸通貨であるドルの牙城が崩れることになるのである。基軸通貨とは、世界で中心的・支配的な役割の通貨で、国際金融取引などで基準として採用されている通貨のことを指す。現在、米国の法定通貨であるドルは、米国の影響を強く受けており、言うなれば米国が国際通貨の動きを握っている状態だ。

 中国政府は、デジタル人民元でそこに割って入ろうとしている。デジタル人民元が世界で広く使われれば、ドル支配の影響を受ける必要はなくなるし、中国政府が世界の金融の動きを監視することもできるようになる。

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