「未来のスポーツの先生」はAI? スマホ動画で「お手本との違い」が分かる時代に(2/3 ページ)

» 2020年02月14日 09時00分 公開
[小山健治ITmedia]

プラットフォームビジネスで普及を目指す パートナーと実証実験も

 AnyMotionはどのようなビジネスに展開できるのだろうか。

 冒頭で「スクワットの正しいやり方」の指導などに応用できることを紹介したが、これはあくまでも分かりやすいユースケースの一例として示したものであり、同社自身がさまざまなスポーツコンテンツの開発や提供に軸足を置いたビジネスに乗り出そうとしているわけではない。目指しているのはプラットフォームビジネスだ。

 「クラウド型のサービスとしてAPI( Application Programming Interface )を公開することで、さまざまなパートナーがAnyMotionの機能を活用した多様なソリューションを簡単に開発できる環境を整え、サポートしていきたいと考えています」と伊藤氏は語る。これにより広い企業にあまねく普及させることが可能となり、さらにはスポーツ分野以外への応用も期待できる。

 今後に向けて同社は、次に示す3つの分野を中心にパートナーと共同し、実証実験を進めていく考えだ。

 1つ目は「フィットネススポーツ」の分野だ。近年、大都市およびその近郊には24時間営業のトレーニングジムが続々とオープンしているが、課題は夜間の時間帯はトレーナーが不在となってしまうことである。全ての会員が正しくマシンを使えているとは限らず、効果が上がらなかったり、ケガをしたりしてしまうおそれもある。また、会員の定着率を高めるための最大の施策であるコミュニケーションも希薄になってしまう。

 「マシンを使ったトレーニングは、ある程度フォームが固定化されるため、AnyMotionのようなシステムを適用しやすいのです。蓄積した動画データを分析した結果をもとに、会員一人ひとりのトレーニングをフォローアップするなど、より付加価値の高いサービスを提供することが可能となります」と伊藤氏は話す。

 2つ目は「ヘルスケア」分野。例えば、リハビリテーションの分野では、何らかの施術を行ったことによって「どれくらい腕が上がるようになったか」といった定量的な効果を、簡単かつ正確に測定することが可能となる。また、骨格の動きから筋肉がどのように動き、どの箇所に炎症が起こっているのかを推定できるなど、医療現場からも注目され始めており、大学の研究室とも組みながら実証実験を進めていく計画という。

 そして3つ目は「エンターテインメント」の領域だ。こちらも企業との間で具体的な交渉を進めている過程にあるという。例えばボーリングであれば、ストライクを取ったときのフォームと直近のフォームとの差異を画面上で比較することで、何が悪かったのかを自分なりに意識しながら修正していけるサービスなどが考えられている。また、イベント系では世界的なスポーツ選手のフォームをお手本として「そっくり度」を判定し、参加者同士で点数を競い合うといったゲームも検討中だ。

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