「しゃぶしゃぶ温野菜」爆発 なぜ報ステは「運営会社」を伏せたのかスピン経済の歩き方(4/5 ページ)

» 2020年08月11日 09時54分 公開
[窪田順生ITmedia]

マスコミも一般企業と同じ

 ブラックバイト問題などに取り組むNPO法人POSSE代表で、雇用・労働政策研究者の今野晴貴氏の『しゃぶしゃぶ温野菜ブラックバイト訴訟、被告会社社長が報道圧力』(Yahoo!個人 2016年9月24日)によれば、この「お願い」を受けて『「しゃぶしゃぶ温野菜」と報道しなかったメディア』は3社あったという。

 産経新聞、東京新聞、そしてテレビ朝日である。

 つまり、加盟社の不祥事には、フランチャイズのブランド、ましてや運営会社はまったく関係ないという考え方は、実はマスコミの中ではそれほど珍しいものではないのだ。実際、今野氏も『一部の記者からは、「しゃぶしゃぶ温野菜」と報道しようとしたが、上からストップがかかったという話も聞かれた』と述べている。

 では、なぜ「上」はストップをかけたのか。もちろん、牛角の広告マネーが大量に入り込んで現場に横やりを入れた、というストーリーも絶対にないとは言い切れないが、個人的には「上」がこのようなスタイルが「安全」だと判断をしたからではないかと考えている。

 マスコミも一般企業と同じで、管理職になればなるほど、責任が問われるようなトラブルを嫌がる。報道現場の責任者の場合、BPOで審議入りするような「報道被害」には神経を尖らせる。

 もちろん、神経を尖らせることは悪いことではないが、それが時にあまりに度がすぎてしまうと、視聴者が首を傾げるような不自然な報じ方になってしまう。例えば、数年前、ラブホテルで火災が起きて多くの人が亡くなるという痛ましい事故が起きた。ご存じのようにラブホテルの多くは外の光が入り込まないように窓が開けられないようになっているので、室内に煙が充満して一酸化炭素中毒になってしまったのである。

 しかし、この悲劇の報じ方がまちまちでテレビ局によっては「ホテルで火災」として報じた。スタジオではコメンテーターが「窓が開かないなんてこのホテルの防火体制はどうなっていたんでしょう」なんてすっとぼけたことを言っていた。

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