“大復活”したコメダ、実力派なのに苦戦するドトール 喫茶チェーンで明暗が分かれた理由長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/6 ページ)

» 2020年12月02日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

急回復した後に足踏みするドトール

 さて、都心型を主力とするドトールの、1月〜10月における既存店売上高(前年同月比)の推移を見てみよう。1月:99.4%、2月:96.2%、3月:77.9%、4月:35.9%、5月:36.5%、6月:67.0%、7月:68.8%、8月:69.3%、9月:71.8%、10月:79.6%となっている。

苦戦が続くドトール

 ドトールの場合は、今年に入ってから一度も既存店売上高が前年同月を上回ったことがない。1、2月は少し良くない程度で、気にするほどではない。やはり、新型コロナの感染が拡大してきた3月から影響が出始め、4月が底となり、その後は回復基調である。

 しかし、6月に急回復した後は、足踏み気味だ。在宅ワークの定着により、都心部に通勤する人が減っている影響がもろに出ている。ドトールほど低価格で品質の高い商品を提供する洗練された企業でも、人の流れが変わればここまで苦戦するのかと、驚きを禁じ得ない。

 恐らくは、今のままの立地によるビジネスモデルでは、元の売り上げまで戻すのは、不可能とまでは言わないが、容易ではないだろう。

エクセルシオール カフェ

 同社には、「ドトールコーヒーショップ」と、グレードアップした「エクセルシオール カフェ」という主要2業態が存在する。10月の既存店売上高は、ドトールが80.3%に対して、エクセシオールは74.1%となっており、エクセシオールのほうが戻りが良くない。これは、エクセシオールの立地のほうがより都心型であることに起因していると思われる。

 店舗数は、ドトール1087店、エクセルシオール123店、その他91店で、計1301店(20年10月時点)。

意欲的な商品を出したが、運が悪かった

 ドトールでは、飛沫防止の間仕切りを導入し、密になり過ぎる場合は席間を空けるなど、感染症対策をしっかり行っている。また、テークアウトを推進するなど、できることはしているのだが、通行量の激減はいかんともし難い。

 無料で使える電源や公衆Wi-Fiを備えた店も多いが、「ビジネスパーソンが移動の合間に立ち寄ってメールをチェックする」といった姿も、めっきり見なくなっている。

ドトールの新提案、全粒粉サンド 大豆ミートと、きなこ豆乳ラテ〜国産丹波黒豆きなこ使用〜

 そうした中でも、ドトールは大豆ミートという代用肉を使った画期的な商品「全粒粉サンド 大豆ミート 〜和風トマトのソース〜」を、9月17日に発売している。喫茶業界で、この手の代用肉商品に本格的に取り組むのは初ではないだろうか。全ての食材が植物性由来となっている。レンコン、ゴボウなど、きんぴらの食感をプラスして和風に仕上げている。

 もし、今年、東京五輪が開催され、ベジタリアンも多い欧米からの観光客が激増していたならば、インバウンドから火が付いて爆発的に売れただろう。東京五輪を目標に、困難な商品にチャレンジした意欲は尊いが、新型コロナの感染が世界的に拡大してしまったのは運が悪かった。

 それでも、商品の評判は良好だ。売り上げを一定程度押し上げる効果があったことは、10月の実績が9月より改善していることに表れている。

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