くら寿司は、20年10月期の既存店売上高(通期)が、前期比で95.7%。緊急事態で、20年4月には51.9%まで落ち込んだが、盛り返した。
20年は夏から秋にかけて「鬼滅の刃」コラボ企画がヒットして、景品を目当てにした顧客が急増。また、10月と11月の「Go To イート」キャンペーンが、「無限くら寿司」と言われるほどの還元率の高さで大ブレーク。11月には、既存店売上高が前年同月比134.4%と驚異的な記録を達成した。
同社も都心部への出店を加速している。1月14日、東京都心部に初の都心型店舗となる西新宿店、渋谷駅前店を同時オープン。今は5店まで増えた。メニューは、オフィスワーカー向け「大人寿司」を用意。お酒も充実させている。新型コロナの影響で大型の居酒屋などが退去しており、借り手がいないビルの空中階を狙っている。スシローの都市型店舗では1皿120円がベースなのに対して、くら寿司の都心型は110円となっている。
くら寿司は、寿司の鮮度を保つため、回転レーン上の皿にプラスチックの蓋「鮮度くん」を設置していた。これには、飛沫を防ぐ効果があると認知されたことから「抗菌寿司カバー」と名前を変えた。
また、20年11月には、入店から退店まで店員と接触せずにサービスを提供できる「非接触型サービス」を標準装備した店舗を、東京都東村山市にオープン。案内のパネルやセルフレジは、タッチレスで操作できる。メニューは顧客のスマートフォンからも注文可能だ。さらに、レーンに設置したカメラで顧客が取ったお皿の数を自動カウントする。座席間の背もたれも高く、寿司は「鮮度くん/抗菌寿司カバー」で守られている。
今後は、「非接触型サービス」を徹底した「スマートくらレストラン」をスタンダードとして出店する。
くら寿司の進化は、巧妙なマーケティング、店舗の改良にとどまらない。
3月8日には、餌や水質でオーガニック水産物の国際基準を日本で初めて満たした、養殖の「オーガニックはまち」を販売すると発表した。認証機関であるオーガニック認定機構が策定した「有機水産養殖及び加工」という新しい規格に準拠している。
同社では、養殖業者の丸徳水産(徳島県牟岐町)と共同開発したオーガニックはまちを、12月に約50トン出荷する計画。くら寿司チェーンで寿司ネタにするほか、スーパーなどへの卸売を行っていく。他の魚の卸売も検討している。
くら寿司は定置網漁船の一船買いを進め、大阪府貝塚市に「くら天然魚市場」という天然魚専門の鮮魚店まで出している。だから、希少なクエなどもネタにできるのだ。
このたび、天然魚に加えて養殖にも進出。物流の川上(生産)から川下(消費)まで、一気通貫する6次産業の形を整えつつある。
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