注目されるのは、新進気鋭の焼売酒場いしいや焼売のジョーなどが、豚肉ではなくて鶏肉を使った焼売で顧客をつかんでいることだ。焼売酒場 小川も20年末から鶏焼売を提供し始めた。スタンド酒場 焼売銭湯は豚と鶏の2種類の焼売が看板商品だ。
「2021年はより上質な鶏焼売の専門店が生まれるのではないか」と、シュウマイ潤氏は期待している。
焼売のジョーは、ラーメン「らぁ麺 はやし田」などを展開する外食企業INGS(東京都新宿区)の新業態だ。20年6月に神奈川県の川崎で1号店を立ち上げた。その後、あっという間に東京の多摩センター、町田、立川と埼玉の大宮へとチェーン化して5店になった。同チェーンに限らず、これからFC(フランチャイズ)を含めた焼売居酒屋の多店舗化が急速に進む可能性がある。
居酒屋の業態でテークアウトの需要がある店は、焼売のほかには餃子くらいのもので、非常に少ない。その意味では、緊急事態や「まん防」などで時短を強いられ、売り上げが激減しても泣き寝入りするしかなかった居酒屋にとって、救世主となる業態が出現したと言える。
焼売ブームは果たしてどこまで拡大するのか。
ブームに乗って地域活性化に役立てようという動きもある。崎陽軒初代社長の出身地、栃木県鹿沼市では「シューマイのまち」を目指し、JR鹿沼駅前に「シウマイの像」を建てる計画が進む。現状、鹿沼で焼売が流行っているとはいえないが、崎陽軒も鹿沼の街おこしに協力していく方針だ。
焼売ブームが粗製乱造となって消滅するリスクもあるが、横浜の名物にとどまらず日本の国民食になるレベルにまで成長してもらいたい。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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