吉野家とすき家の「牛丼並盛」に、37円の差がある意味 コロナ禍で明暗を分けた戦略を読み解く飲食店を科学する(2/4 ページ)

» 2021年08月31日 05時00分 公開
[三ツ井創太郎ITmedia]

立地戦略から見る業績への影響

 業績の明暗を分けた要因の一つに「立地戦略」があります。すき家と吉野家にはどのような違いがあるのでしょうか。

 すき家は全体的に郊外ロードサイドの店舗が多いという特徴があります。実際にすき家の公式Webサイトを確認すると「ドライブスルーを備えた郊外型店舗を中心に出店していく」という方針が打ち出されています。一方、吉野家はすき家に比べて繁華街型の店舗が多いという特徴があります。

 コロナ前は「優良立地」とされていた都心や繁華街。こうした人口密度が高い場所も、長引くコロナ禍に伴う自粛や在宅ワークなどの浸透により、その優位性が薄れてきています。

 両ブランドの立地戦略の違いは、都道府県別の店舗数からも見えてきます。

すき家と吉野家の都道府県別店舗数分析

 今回は、各都道府県の人口を両ブランドの店舗数で割ることで、1店舗当たりの人口を算出していきます。

「1店舗当たり人口=都道府県人口÷店舗数」

 これは、外食チェーンが全国展開を行う際に用いる分析手法の1つです。そのエリアでの展開店舗数の限界値を見極める際に使います。日本国内の外食企業が海外進出を行う際、マーケットポテンシャルを見極める際にも活用します。

 全国合計で見るとすき家は人口約6万5000人に1店舗です。一方、吉野家は人口約10万6000人に1店舗でした。吉野家はすき家より多くの商圏人口を必要とするビジネスモデルであることが分かります。逆に考えると、すき家は吉野屋よりも少ない商圏人口で成り立つビジネスモデルだといえます。

 なお、全国合計で見ると、すき家は吉野家の約1.6倍の店舗数となっています。都市部以外に目を転じると、吉野家の約4倍の店舗を出店している地域も多くあります。地方になればなるほど、すき家の店舗数が多いことが分かります。ちなみに、吉野家がすき家よりも出店数が多いのは宮城県と奈良県のみなります。

 立地戦略が異なれば、当然ながらターゲットやメニュー戦略も変わってきます。

 そこで次に両ブランドのメニューの分析をしていきます。

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