大学事務局よ、ブラックバイトに対処する責任はあなた方にある:約6割の学生がトラブルを経験(1/4 ページ)
ブラックバイト。最近耳にするようになった言葉だ。企業の中には、学生の法的無知や優しさに付け込んで、とんでもない働かせ方をしている。彼らに対処すべきは、学生の味方である大学の事務局である。
日沖博道氏のプロフィール:
パスファインダーズ社長。25年にわたる戦略・業務・ITコンサルティングの経験と実績を基に「空回りしない」業務改革/IT改革を支援。アビームコンサルティング、日本ユニシス、アーサー・D・リトル、松下電送出身。一橋大学経済学部卒。日本工業大学 専門職大学院(MOTコース)客員教授(2008年〜)。今季講座:「ビジネスモデル開発とリエンジニアリング」。
アルバイトといえば学生の小遣い稼ぎで、あまり当てにできない戦力。これは昔の常識。今や飲食業・サービス業を中心に多くの現場オペレーションに組み込まれており、無くてはならない存在となっているのが実態である。しかし学生の法的無知や優しさに付け込んで、とんでもない働かせ方をして恥じない連中がいるのも事実だ。彼らに対処すべきは、学生の味方である大学の事務局である。
辞めずに深入りするケースも
ブラックバイト。最近耳にするようになった言葉だ。学生を中心とするアルバイトの雇用・使用において、そもそも労働基準法に違反するやり方だったり、募集時に合意したはずの内容と違った業務をさせたり、もしくは学生なのに過度な責任やシフトを背負わせたりすることによって、学生生活に支障をきたすような労働実態を指している。
その問題事例は多岐にわたる。例えば「残業代の不払い」や「労働時間の不当なごまかし」「給料支払いの滞納」など汎用的で法律違反が明白なものもあるし、「(準備作業や事後の報告などに時間を取られるのに)塾で実際に教えているコマ分しか時給がカウントされない」(「コマ給問題」といわれる)などといった業界特有の実態もある。
また、本人の希望を無視したシフトを組まれて授業への出席や試験に支障をきたしたり、バイトリーダーと称してもめ事を収める役割のせいで試験中でも緊急連絡が入る、など学生の身で背負うには重すぎる責任を課されたり、ひどいケースでは売上ノルマを課されて不足分を自腹で補わされたりすることもあるようだ。
ここまで聞いて、小生の世代の人間は大半が首をかしげるはずである。「そんなひどいバイトなら、さっさと辞めればいいじゃないか」と。実際、泣き寝入りしているケースも少なくないそうだが、辞めずに深入りするケースも後を絶たない。
われわれの頃とは事情が大きく変わったのである。まず長引いた不況の影響で学生の親が仕送りなどを減らさざるを得なくなった。しかもなぜか大学の授業料は高騰し続けてきた。その結果、多くの学生にとってアルバイトは「小遣い稼ぎ」の手段ではなく、学生生活を続けるための必須手段になっているのだという。気に入らないからと簡単に辞めるわけにはいかないと学生は考えがちで、しかも忙しすぎて、次のバイトを探す時間的余裕すらないのだという。
もちろん、絶対的に言えるのは彼らの法律的知識と社会的常識の不足である。不当な扱いを受けて「おかしいな」とは感じながらも、どこがどうおかしいかを指摘できないのだ。社会人の店長・上司が言うのだから法律的にも正しい、未熟な自分が知らないだけにすぎないなどと思い込んでしまうのかもしれない。
しかし本来なら親御さんや職場外の社会人の先輩、先生方に一言相談すれば済むようなケースでもそれをしていない。よほど世界が狭いのかもしれない。また、得意のインターネットや図書館で調べればすぐに分かりそうなものだが、その時間的余裕すらないのかもしれない。
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